第438回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第437話 五条の町の大池書店での出来事。 2013年5月4日 土曜日の投稿です。
私は、「みんみんみんみーーーーーーー。」と、セミの鳴く、暑い7月の夕方、奈良からの帰り路、
五条の町にさしかかったのであった。
五条の町というのは、 橿原神宮の近くの町のことで、そこに通りかかったのであったのだが、
1度家に帰ってから、大池書店に行こうか、 それとも、家に帰る前に、しようかと、道中、考えたので
を1番に、渡すことにしたのであった。
橿原神宮は、現在は、空母瑞鶴の記念碑などがあって、海軍に縁のある神社で、
空母 隼鷹【じゅんよう】の、前の名前は、橿原丸【かしはらまる】と言って、ここの神社
の名前である。
私は、本殿前に行って、手を合わせて、神様に、御礼を言って、健康に無事、兵学校を
卒業出来ますように、と、お祈りをしたのであった。
お祈りをすると、胸が、すうっとして、良い気持ちになり、 そのまま、敏恵さんの
家の方向に、歩いて行ったのであった。
そろそろ、夕方で、早く帰らないと、日が暮れてしまうのであるが、男の本性というか、
なんというか、書店の方に、吸い寄せられてしまったのであった。
やれやれ、と、本屋の中に入ると、敏恵さんのお母さんがいて、 「あのーー、
淵田です。」と、挨拶すると、「 まあーーー、今敏恵は、出ていましてね。」と言う、
私は、残念に思ったのであったのだが、手提げ袋から、下駄を2つ取り出して、
「 おばさん、色々とお世話になりましたが、やっと、海兵の2次試験、合格して、
来月の後半に、海軍兵学校の入学が決まりました。 これはーーー、広島の
おみやげですがなーー。」と、下駄を手渡すと、 「まあーーー、花柄のきれいな、
蒔絵【まきえー漆の模様の事】で、きれいなお花の模様が描いてあって。」
と、ずいぶんと、喜んでもらったのて゛あった。
おばさんが、「 何にもないけど、お茶でもーーーー。」と、さそわれたのであったが、
「 実は、早よう家に帰らんと、日が暮れるので、また、後日、ゆっくりとよらせていただき
ます。 」と、挨拶して、 大池書店を後にしたのであった。
まっ、要は、気持ち、1番に、よらせていただいて、気持ちが伝わればよいかなと
当時は、思ったのであった。
私は、7月の暑い道のりを葛城村目指して、重たいお土産を持って歩いたのであった。
【次回に続く。】