第1613回 昭和の伝道師【 戦中、戦後のパイロットの物語】
第1612話 第四十三潜水艦の事。2016年8月27日 土曜日の投稿です。
【たかはし よしお】 海軍少将から私達は、日本海軍軍人としての心構えのお話を
聞くことになっていったのです。
いな、たいしたもんや。」 と心の中で当時思ったのです。
何の話から始まるのかと思えば、 古流の 兵法 二天一流の巌の構えという
お話から始まっていったのです。
巌 と書いて、 いわお のかまえ と、読みます。
私は、「はてーーーー、どないな 構えなんやろか。」と、耳を澄まして聞いていると、
太刀と脇差を両手でもって、二刀で構える構え方かと思っていたら、そうではなかった
のです。
巌の構えとは、 いつでも死を迎える心の構えであったのです。
お師匠から、「 おい、 これより切腹せよ。」と、命じられると、 ためらわずに
両手で三方を開いて、腰刀を両手で持ち、 鞘をすーーっと抜いて、白刃を
迷わず、 自分の腹につきたて、 横一文字に切り開き、 抜き直して、今度は
溝打ちを突き刺し、 腹の下まで切り下げ、十文字に腹を切って、喉を突いて、
絶命を待つというのが、正規の切腹の作法らしいのですが、 巌の構えとは、
絶えず死を覚悟して、命令があると、死を恐れず、これを行うという、こういう
意味があったそうです。
私は、高橋閣下から、こんなお話を聞いて、グッとくる物が当時あったのです。
そして、 さっと、 忠誠 と書いた、額を私達に見せて、「 皇国 【おくに】の為に
忠誠を尽くす。」 と、言うお話になって行ったのです。
【1924年 大正13年当時の 第四十三潜水艦の断面図 】
高橋閣下は、「 これから、皇国の為に尽くすとは、どのような事か、その心がけ
を貴様らに紹介する。」 と語り、 数ヶ月前の 第四十三潜水艦沈没事故のお話
が始まったのです。
当時、佐世保防備隊の配下に、第二十二潜水隊という 潜水艦の部隊があって、
この艦隊の中に、 第四十一潜水艦、 第四十二潜水艦、 第四十三潜水艦という
3隻の潜水艦があったのだそうです。
【 第二十二潜水隊所属 第四十三潜水艦 】
いよいよ、高橋 節雄 海軍少将から、私達に事故当日のお話が紹介されて
行ったのです。
【 明日に続く。】