第1617回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第1616話 第四十三潜水艦 桑島 新 艦長心得 絶命の時間の事。
2016年8月31日水曜日の投稿です。
第22潜水隊の3隻の潜水艦、 第41、 第42、第43潜水艦は、長崎県
佐世保市の西、 相浦の沖合に散開し、 同じ潜水隊の特務艦、見島を陸軍の
兵員輸送船という想定で、水中から攻撃すると言う想定で、早朝から演習を
行っていたのですが、 特務艦 見島の左弦 90度方向 距離6千メートル
【 日露戦争でロシアから押収し、 その後、特務艦 見島 として活動していた。】
と言いますから、 3隻の内の1隻の第43潜水艦は、 特務艦の見島の真横
に対して、艦首を見島に向けて潜行中、 艦長心得の桑島 新 海軍大尉は、
潜望鏡深度まで浮上の命令を発令し、潜水艦は水面の下ぎりぎり程度まで浮上
したのです。
【 衝突した 軽巡洋艦 龍田 】
ところが不運が重なったというか、間が悪かったというかなんというか、
潜望鏡深度に浮上して、 潜望鏡をあげたところ、誰でも前を見るわけで、
見島の6キロ先の艦影を見ていたのでしょうが、 見ていた場所はなんと
軽巡洋艦 龍田の進路、 わずか数十メートル程度前であったのです。
龍田の見張りが気がついた距離は、およそ50メートル程度、 龍田の速力は15
ノットであったそうで、 急いで「 警報、 前方 潜望鏡。」と叫んだそうですが
遅かったのです。
【 第43潜水艦の司令塔 ちょうど数字の場所に龍田が衝突したと推定される。】
潜水艦の右舷横から、 龍田が突っ込み、潜望鏡が折れ、 龍田の喫水線の
下の艦首が、第43潜水艦の司令塔と、その付け根の船体に衝突し、大きな
破損を生じて、 一挙に潜水艦内に海水が入って行ったようです。
【 第43潜水艦 艦長 心得 桑島 新 海軍大尉 殉職後 少佐進級 】
当時を想像すると、潜望鏡をあげて、ちょうど前方向をのぞいていると、突然
衝撃が加わり、 ドーーーンッと音がしたとたん、 電源が切れ、艦内は暗闇となり、
5千トンクラスの軽巡が15ノットで真横から衝突するわけですから、 おそらく
第43潜水艦は、水中で押し出される程度に左に横倒しになったと思われます。
【 大正13年当時の 第43潜水艦 横断面図】
つまり、巡洋艦 龍田の艦首は司令塔とその下の発令所、そしてその下の
タンクを横から追突して、破壊してしまったのです。
そして、ここに一瞬の間に、どっと海水が入り、 艦内は暗闇となって行ったの
です。
【 故 桑島 新 海軍大尉の遺品。 当時持っていた時計 】
第43潜水艦をその後引き揚げて、桑島 新 海軍大尉の遺体の服のポケット
から出て来た時計は、朝の8時54分で止まっていたそうです。
ちょうど、この時間が、発令所にいた人達の絶命の時間であったようです。
考えるに、彼等には何があったのか、わからないまま、亡くなっていったので
あろうと推測されます。
まさか、横から 軽巡洋艦 龍田 が迫ってくるとは知らなかった、 知らな
かったから、わずか50メートルの距離で潜望鏡をあげたわけです。
おそらく、潜望鏡を上に上げて、数秒で、衝突があったのでしょう。
次回は、 どのような人が当時 第43潜水艦の発令所にいたのかを
勉強したいと思います。
【 明日に続く。】