第1629回 昭和の伝道師【 戦中、戦後のパイロットの物語 】
第1628話 第43潜水艦 穴見 儀三郎 機関兵曹長の遺書の事。
2016年9月12日 月曜日の投稿です。
前話で紹介したのですが、 穴見 機関兵曹長の遺書を順番に今の現在の
人達に紹介していきたいと思います。
文字の書き方、 当時の言い回しが、戦後の現在では意味がわからない部分
もあるので、 わかりやすく紹介したいと思います。
【 大正13年撮影 穴見 機関兵曹長の手帳のページ 】
穴見 機関兵曹長 遺書
謹んで両陛下皇太子殿下に白す小官匹夫と難君国のため
倒れんは無上の光栄にて、畿回も生まれかえって報国せん。
つくづく 下士官兵の遺族を哀れみ賜らんことを希ふのみ。
午前845 発令所に大なる激動あり、その前 深度 5,0の報あり
確かに衝突せしものと認む、 それと同時に管制室より隔壁を徹し、
漏水甚し、900時 ダウン 30度に及び、 左傾斜40度にて沈舵す
其れと同時にメインスイッチ切断すっ、そそぎ筒を使用せんとするも不可能
なり、 機械室 漏水と供に兵員は電動機室に移セリ、軸承そそぎ筒の蓋
漏水す、ただいま920なり、 沈没前 尚 電動機は全速なりし、機械停止
と、「プロアウト」を注意せんとせしも己【おのれ】に電話不通なり、潜水艦
乗員は大に注意 注意を
怠らさるを要す大胆には凡そ緻密を要するものならん ただいま930 なり、
940より、他艦より水中信号盛なれども読める物無し、 同刻、潜水員らしき
ノックの音あり、よって吾れは、応答セリ、欺かるごとき困る故、ブロックアウト
は各室にて行ひ得べく改造せられたし、只今、950なり、油圧排水タンクへ
海水逆流せり、ますます気圧高まる之れ漏水及気蓄器の漏電ならん 只今
1215なり、 只今 35分なり、電動機室 漏水し、どんどん気圧高まり
冷気を感ず。
このページまでが、 お昼までの書き込みのようで、 この手帳を見ると、
軽巡 龍田と第43潜水艦の衝突事故のあった時間というのは、午前8時45分
前後であったようです。
【 艦長心得 桑島 新 海軍大尉の 時計 大正13年撮影 】
桑島 艦長心得の時計が止まっている時間は、 8時54分で、 数分で
発令所に海水が流れ込み、全滅したようです。
この遺書にある、「 ブロックアウト。」 と言う意味合いは正確には不明ですが
おそらく、 各部屋をブロックして海水の浸入を防ぐと言う意味合いではないか
と推測します。
そして、 各部屋部屋への連絡がつかないので、非常の場合、隔壁を締め
切ってもそれぞれの部屋の連絡がつくように改造してほしいと、教訓を
手帳に書いたようです。
衝突事故から 55分後の9時40分に 潜水員らしきノックの音と思われる
という文章は、 高橋閣下のお話に出て来る、 軽巡 龍田の水中偵察員
の船体を叩く、その音ではないかと推測します。
穴見 さんの遺書はまだ続いて行きます。
次回は、その続きのお昼過ぎからを紹介したいと思います。
【 明日に続く。】