第1761回 昭和の伝道師【 戦中、戦後のパイロットの物語 】
第1760話 桜井小隊事件その2の事。2017年3月17日金曜日の投稿です。
【 前話の続きから。】
桜井 特務曹長は、 残余の小隊の17名の兵力で、進んできた道を、暑い
立ちくらみがするような暑さの中、 戻っていったのです。
すると、 前方から3名のゲリラが茂みの陰から発砲し、 一行が伏せると、
谷間にそって、 林の中に続く、獣道に駆け込んでいったのです。
桜井特務曹長らは、その後を追跡していくと、なんと、1名の小隊の兵が
殺害されて、死体が放置され、 小銃、銃剣、弾薬などが奪われていたの
です。
そして、さらに100メートル先にも、2人目の兵が殺害され、死体が放置され
小銃、銃剣、弾薬、が奪われていたのです。
これらの遺体を見て、桜井特務曹長が、「 おのれーぃ、必ず仇を討ってやる。」
と、つぶやいていると、 先ほどの3名が、また撃ちかけてきて、応戦する
と、 又、獣道を奥に谷にそって、奥へ奥へと走り去っていったのです。
桜井 特務曹長は、「 小隊、前へ。」と叫んで 前進しようとした時、1人の
が、「 何か 貴様。」と、問うと、「 おかしいであります。」と言う、 「 何がお
かしいか。」 と、大声で怒鳴ると、 「 小隊長殿、死体の位置が、どうもわざと
「山川あい狭まり草木しげるは伏兵有り。」と書いてあります、 この地形まさに
その地形であります。」 そう言うと、 右脇から 上等兵が、「 あの小銃、殺され
た兵の小銃であります。」 「 小隊長殿、出発時、35名、現在17名、半数が行方
不明であります、 中隊本部に援軍を申請したらどうでありましょうか。」と言うと、
桜井特務曹長は、「 貴様等怖じ気づいたか、 仲間の仇を討たずに、中隊に
帰隊は出きんぞ。」 と叫ぶと、 しばらく無言で考えて振り向くと、「 よし、貴様、
これより中隊本部に急いで伝令で走れ、 顛末を報告して、中隊長に判断を仰げ、
我等はこれより、この谷を捜索し、ゲリラを追討する、急げ。」 と命令を出すと、
1名の伝令が、中隊本部に向かって走って行ったのです。
桜井特務曹長は、周囲を見渡すと、 「 みんな しっかりしろ、 仲間の仇を
討たずして、中隊には戻れんぞ、 小隊前へ。」と 命令を出し、 獣道を進んで
谷の中を進んでいったのです。
しばらく進むと、 3名目の小隊の兵の死体が道に横たわっていて、 さらに行くと
5名の兵の死体がおり重なっていて、小銃、銃剣、弾薬がはぎ取られていたのです。
「 おのれーーーぃ。」 と、 見つめていると、後の兵が、「うっ。」と うめき声を
出して、矢を受けて倒れると、 その隣の兵も矢を首に受けて、応戦する間もなく
くずれるように倒れ込んでいったのです。
桜井 特務曹長が、 「 全員 応戦。」と叫んで、 林の茂みを見ると、左右の
斜面に ゲリラが布陣していて、 敵に包囲されていたのです。
相手は、100メートル程度の間隔を置いて、近衛兵の死体を道沿いに
置いて、 桜井小隊を 谷の中の獣道におびき寄せ、 左右の斜面から
一斉に 攻撃して来たのです。
つまり、近衛兵の死体は、 おびき寄せるエサであったのです。
右側の茂みに発砲して応戦していると、 左の後から攻撃され、挟み撃ち
にあい、 「 うわっーーぁ、 うっっーーー。」 と うめき声を上げながら
次々 日本の近衛兵は倒れていったのです。
桜井 特務曹長が、「 しまった、ワナにはまった。」と、 脳裏に思い浮
かべたその時、背中に矢がささり、息が吸えなくなり、その場に崩れて
行ったのです。
このような経緯で、 伝令に向かった、1人を除いて、桜井小隊34名と
連絡が取れなくなったのです。
【 明日に続く。】