第2019回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第2018話 甲申事変【こうしんじへん】 外務協弁 メレンドルフの失策の事。
【 イギリス軍が武力侵攻した 巨文島 】
【 前話の続きから。】
みなさん、 大朝鮮国 ドイツ人外交官 メレンドルフさんが失敗したと
いうのは何であったのか、 それは 他心通 【たしんつう】でした。
何でもそうですが、 物事が終わった後、人を批判することは良くないですが
彼は頭の良い語学力に優れた人でありましたが、 他心通 つまり、相手の
考えや、目的を 探ることが疎かになっていた、 それが原因で交渉自体が
初めから成立しなかったようです。
もう少し、偵察活動を行い、 イギリス海軍が何の目的で 巨文島を占拠した
のか、交渉で聞き出したり、調べたりして、 それから外交交渉を行うべき
ところ、それを行わなかった、 故に、 イギリス政府の考えを知ることがな
かったようです。
イギリス海軍は、イギリスのロンドンからの指示で、巨文島を占拠した訳です。
島はたくさんあるのに、どうして巨文島なのか、 ここのところを注目してよく
検討するべきであったようです。
でもロシア帝国の進出や、動向に神経を尖らせていたのです。
そこにロシア帝国に入り込んでいた諜報員から、 大朝鮮国の政府がロシア
帝国に巨文島を売り渡そうとしているとの情報を得て、 急いで占拠した訳です。
それを知らずに、 「 ワタシタチハ、シンテイコク ダイチョウセンコク ロシア
テイコク ノ サンカコクノ ガイコウシセツデース テッタイヲ ヨウキュウシマース。」
と、 申し入れて、火に油を注ぐ形になっていった様です。
もう少し、調べて、 検討して、 大朝鮮国の政府だけと言う形で交渉すると
また違った交渉になったかもしれません。
【 イギリス海軍 極東艦隊 司令官 リチャード ハミルトン 】
ハミルトン司令官は、「フンッ。」 と言うような顔つきで、メレンドルフさんの
申し入れを拒絶し、 武力を行使しても ポート ハミルトン こと 巨文島を
防衛すると主張し、 そしてこう言い放ったと言われています。
「 ユーーーゥ ガンザン 【元山】ヲ ロシアノ イワンニ ワタシタリシタラ
マヨワズ、ガンザンヲ コウゲキシテ センリョウスル ロシアノ シンシュツハ
ゼッタイニ ソシ シマース。」 と申し入れたと言われています。
イギリス側は、 土地や島がほしいのではなくて、 ロシア帝国が進出して
来るのは、後の災いになると考えて、 ロシアが出て来る場所を事前に占拠
して、それを防ぐ目的であったのです。
そして、 大朝鮮国の政府が、元山港とその周辺をロシア帝国に割譲する
ことを実行するならば、迷わず、その前に武力で攻撃して、その場所を占拠
すると主張したそうです。
そういう事情で、 長崎港での交渉は決裂して、 なにも成果がなかったの
ですが、 ここ長崎の交渉で、 イギリス側の話を聞いて、ロシアには割譲しない
ことを約束し、 撤退の話をまとめていたとしたら、 この後の歴史も変わったかも
しれませんが、 当時 イギリス人に、 大朝鮮国の政府の外務協弁の衣冠束帯
姿を 大笑いされ、 頭に来ていたのか、 長崎を立ち去って、 東京に移動した
そうです。
メレンドルフさん達は、東京への移動の道中、 外交使節のメンバーと話し合い、
こう言う事が必要不可欠で、 特に海軍力の充実は急務であると考えるようになり、
ところが、大朝鮮国の政府の国庫は破綻していて、 武器を揃える資金も、兵士の
給金も払えない状態であったのです。
つまり、 西洋兵器を調達するのにも、 お金がないと、何も買えないわけです。
軍艦や大砲や、小銃、弾薬などを 調達する方法は、メレンドルフさん
は武器販売の仲介をしていたので、よくわかっていたのですが、 その資金をどう
するかと言う事について、 頭を捻って、 東京に向かったと言われています。
いよいよ、大日本国の首都 東京が 出来事の舞台になって行きます。
【明日に続く。】