第2154回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第2153話 東和洋行ホテル事件 西京丸事務長 松本 良吉氏の事。
2018年5月13日日曜日の投稿です。
【 前話の続きより。 】
「 清国の北洋大臣 李鴻章 閣下と 面会の打ち合わせに行ってまいります。」
と、 神戸から同行していた 呉 静軒 という清国人通訳が、上海に到着した翌日
の3月28日の午前中、 宿泊していた 東和洋行ホテルの2階の2号室から外出し、
2号室には、 朝鮮人 洪 鐘宇 氏 一人となっていたとされています。
となりの1号室の 岩田 周作 こと、 金 玉均 氏と、付き人の北原こと、和田
延次郎 少年の2名で、外出した呉の帰りを待っていたそうです。
昼食後、 船旅の疲れが出たのか、金 玉均 氏は、「 延次郎よ、気分がわるく
なって来た。」 と、体調不良を訴え、1号室の窓際においてあった 休憩用の椅子
に横たわり、昼寝をしていたとされています。
3時間ほどして、 1889年 明治27年3月28日の15時頃、金 玉均 氏は
ふと目を冷まし、 付き人の和田 延次郎 少年を呼び、「 延次郎 すまんが
港の西京丸まで行って、 事務長の松本さんに、 このホテルまで来ていただ
くよう使いに行ってきてくれんか。」と、語りかけ、 和田少年が、「 西京丸の 松本
事務長様ですね。」 と 確認するように言うと、「 おう、そうそう、すまんな。」と行っ
てまた、目をとじて、スヤスヤと昼寝をしだしたそうです。
松本事務長に会いに、 和田 延次郎 少年が静かに1号室の扉を閉めて、廊下
に出て、 階段を下に降りていったそうです。
壁に 耳を当てて この会話を聞いていた 隣の2号室の洪 鐘宇 氏は、
洋服を脱いで、 手荷物の中にしまっていた、 白い 朝鮮服に着替えて、回転式
拳銃を手に握り、いつでも発射できるように、親指で ハンマーを「 ガチャリ。」と
「 いよいよ、時が来た。」と、 息をひそめて、 和田少年が1階に降りるのを
静かに待ち、 金 玉均 氏が一人になるのを待ったとされています。
いよいよ、東和洋行ホテル事件の始まりとなって行ったのです。
金 玉均 氏が何を考えて、和田 少年に、 西京丸の事務長 松本 良吉氏
を 東和洋行ホテルの2階の1号室に来てほしいと、考えていたのか、何の用事で
あったのか、120年近く経過した現在も謎のままとなっています。
【 明日に続く。】