第129回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第128話  教頭先生に礼を申し上げる。                2012年6月17日 日曜日投稿です。
 
教頭先生に話しかけると、下を向いて、困った顔をして、なにか、思い詰めているようであった。
 
ハッと気がついたようで、「おうーー淵田君か、元気かーーー。」と、作り笑顔になったのであった。
 
「実は、英語の紹介状の件で、御礼に上がったのです。」と言うと、教頭先生は、机から、立ち上がって、イスの
 
方に移動して、「まっ こっちにかけてくれ。」と言って手招きされたので、応接セットのイスに腰をおろしたのであ
 
った。
 
「教頭先生、良い方を紹介していただきまして、ありがとうございました。英語の発音の、ふりがなと言いますか、
 
発音記号をご指導いただいています。 だいたい暗記したのですが、また゜また゜なのです。」と、いうと、教頭先
 
生は、海軍兵学校陸軍士官学校は、全国の一流中学【現在の高等学校】が、入試に力を入れている。
 
奈良県から合格者が1名出るか出ないかの難関だ、来年はぜひ合格してもらいたいと心からおもっているよ。」
 
と、言われたのであった。
 
「ところで、教頭先生、聞かれない事をお伺いしますが、何かあったのですか。」と聞くと、「実はねー、今日、
 
奈良の連隊の陸軍の将校が、ここに来て、今後毎年、来年早々に、学校の正式行事として模擬軍事演習訓練
 
を行え。」と、言ってきてね、教員の中に異論を唱えて、参加しないという、教員もいて、ほとほと間で、校長先
 
生と一緒に、困っているのだよ。」と言われたのであった。
 
当時、学校では、ご真影が安置され、天皇を敬い、朝夕、天皇を崇拝する教育が行われてきたのであるが、
 
だんだんと、音楽の時間に、軍歌を斉唱したり、国語の授業に、戦争関連の物語を読んだりと、教育の現場に、
 
軍人が介入してきたのであった。
 
その後、昭和になると、学校に軍人が常駐し、軍国教育に反対する教師は、憲兵隊や、特別高等警察に、
 
逮捕されていくのであった。
 
【次回に続く。】