第145回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第144話  校内軍事演習の話                    2012年7月3日 火曜日
 
考え事をしている教頭先生に、「あのー淵田ですが、電報をいただいたようで、校長先生がお呼びでしょうか。」
 
と、訪ねると、教頭先生が、「いやー良く来てくれた、入試前にすまんねー。」と言って、立ち上がって、「まっ
 
こちらに座ってくれたまえ。」と言って、いすに腰をかけるように、勧められた。
 
「淵田君、勉強は進んでいるかね。」と、聞かれたので、「時間を作って励んでおります。なにしろ昨年だめでし
 
たので、今年は必ず合格しませんとーー。」と、話したのであった。
 
教頭先生が、「実は、昨年話していたと思うが、奈良の38連隊の将校が来て、学校で軍事教練ならぬ、軍事
 
演習を行う話し、一部不協力者がいて、人がたりんのだよ、そこで、入試の勉強で忙しいのに申し訳ないが、
 
2日程度、母校のために、時間を作ってくれんかね。」と言う、「教頭先生 日時はいつでしょうか。」と聞くと、
 
「それがだな、来月の3月の1日か、2日を予定しているのだよ、それがすんだら、直ぐ卒業式だ、受験や、
 
なんやかんやで、人が集まらなくてね、教師の中にも、参加しないという人が多くて、先生は陸軍との間で、
 
悩んでいるとこだったのだよ。」という、今は、入試前でそんなことしている時期ではないのであるが、2日
 
程度ではあるし、どうせしないといけないのであれば、笑顔をした方が良いと感じ、「僕で良かったら、お手伝
 
いします。」と即答したのであった。
 
【次回に続く。】