第159回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第158話  小銃訓練、                            2012年7月17日火曜日投稿です。
 
しばらく、練習用の木台に、突きの練習をしていたら、安藤大尉が「全員やめーー傾注。」と大きな声で、練習を止
 
めたのであった。
 
「全員、元の位置に整列。」というと、素早くみんな校庭に元の列に戻ったのであった。
 
安藤大尉は、「玉井上等兵、歩兵銃を持って、前に。」と、命令すると、上等兵は、小銃を持って前にでた。
 
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  「諸君、いままでは、木銃で稽古をしていただいたのであるが、今度は、本物の小銃で順番に稽古をしていた
 
だく、但し、事故があったらいけないので、我々の指示に必ず従うこと、おい、そこの後の、生徒、あーー、おまえだ、
 
ちゃんと聞いておくように、話しを聞いていないのが、ケガをする、良いな。」と、言ったあと、今度は、「籏屋二
 
等兵、高松一等兵ともに、簡易作業台を用意しろ。」と、命令を出すと、2名の兵士は、すたすたと、馬車から組
 
み立て式の作業机を、運んできて組み立てたのであった。
 
「玉井上等兵、ここに小銃をおけ。」と、安藤大尉が命令すると、上等兵は、大事そうに、小銃を横に寝かせたの
 
であった。
 
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                 「諸君よろしいか、これから戦地での小銃の手入れについて、お話しする。」
 
「小銃を射撃すると、火薬の煙が発生して、小銃の銃の中が汚れる、放置しておくとどうなるであろうか。」
 
「おい、そこの生徒、いうてみぃ。」と指示を出すと、前の列の生徒が、「小銃が硫黄で錆びてしまいます。」と
 
解答すると、「そうである、放置しておくと、サビが生じて、その後、動かなくなってくる。」
 
「戦地では、夜の暗い中でも、分解整備が出来る様になっていないと、だめである。」と言いながら、小銃の
 
左のレバーを横に開いて、遊底をおこして、後にひいて、抜き取った。
 
「この、遊底をとると、銃身の中が見えるので、銃身の下のこの棒を、さく杖というのであるが、これを引き抜いて、
 
油のついた、布で前から、後から、差し込んで手入れしていく、こういう風に手入れをする。」
 
「えーー、そこの生徒、おまえだおまえ。」と、呉服屋の清水君が指名され、手入れの実習をさせられたのであった。
 
「良いか諸君、この小銃には、天皇陛下の菊の御紋が刻印されておる、天皇陛下の小銃であるからして、大切に
 
扱うように。」と、言ったのであった。
 
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                       【当時の兵舎での小銃の手入れ風景】
 
その後、順番に手入れの実習を代わる代わる行っていったのであった。
 
しばらくして、自分の順番になったので、さく杖という、銃身の下に差し込んである棒を持って、銃身の中に入れて
 
前後させてみた。
 
生まれて初めて触れる小銃である。
 
ぜひ、1度撃ってみたいと思ったのであるが、ずいぶんと重たい小銃で、長かったのを記憶している。
 
【次回に続く。】