第573回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第572話   海軍兵学校 太刀落としの事。         2013年9月16日 月曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
 
 
     「  ほぉーーーーーーーーーーう。」と、言うどよめきの後、武徳殿の中が、静まりかえると、
 
 
 中山博道先生は、「 きみ、 軍刀を取りなさい、」と言うと、源田【後の空将、参議院議員】は、
 
ごろごろと転がっていった軍刀を、手に取り、中山博道先生の指示で、 また、正眼に構えたの
 
でありました。
 
 
「 諸君、見たまえ、 先ほどご覧に入れたのは、 神道夢想流の太刀落としという、技で、今日はこれか
 
ら、説明するので、よく覚えていてもらいたい。」と、 武徳殿の中の見学者に語りかけたのです。
 
 
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       私は、後の方から、武徳殿の中を見渡しますと、高松宮殿下や、寺本教官、など
 
    全員が、源田と中山博道先生を見つめていたのでした。
 
    「 この太刀落としという、技は、 脇構えの姿勢から、 相手が打ち込んできた所を、 右に
 
      1歩程度、体を横にさばいて、 相手の太刀が空を斬り、腕が伸びきったその一秒程度
 
    の動きが一瞬止まったときに、 杖を、刀身の切っ先のみね地から、杖を軽く押すように、
 
    すうっと、すべらせていく、すると、はばき元の鍔にあたるわけである。
 
    この一瞬の時に、 左手で、 すこし鍔をたたいて、 衝撃を与えると、こうなるのである。」
 
    と、言って、 杖で、刀身のみね地をすべらせていき、鍔もとをたたくと、源田の持っていた、
 
    軍刀は、またまた、音をたてて、道場の床に落ちて、ゴロゴロと、転がっていったのでした。
 
   
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    すると、武徳殿の中は、また、「 ほぉーーーーーーーーう。」と、どよめきに沸いたのでした。
 
 
    中山博道先生は、源田に、「 きみ、すまんが、軍刀を、よく拭いて、鞘に収めて、木刀を
 
   ふたふりもってきてくれないか。」と、指示を出すと、 源田は、軽く礼をして、急いで、道場
 
 
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      の壁に、備え付けの刀かけに、軍刀をていねいに置くと、木剣をふたふり、道場の
 
     壁掛けから、取って、片方を中山博道先生に手渡したのです。
 
     中山博道先生は、「 君、 正眼に構えてみなさい。」と、指示を出すと、 「 諸君、今度は
 
     先ほど説明した、杖術の太刀落としという技を、剣術に応用する技を紹介する。」
 
 
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     すると、 中山博道先生は、木剣の刃を上にして、 みね地を下にすると、 「先ほど紹介した
 
     ように、 日本の刀には、反りという、曲がりがつけてあって、 切りやすく工夫してあるので
 
     ある。 これから、これを生かして、 応用技を披露するので、よく見ておくように。」
 
     と、話をすると、 源田生徒に、「 君、すまんが、 先ほど見せてくれた、突きをもう一度
 
    仕掛けてきてくれたまえ。」と言って、 2人とも、正眼に構えて、 相対したのでした。
 
 
【次回に続く。】