第600回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第599話  ハルピン特務機関、泰平組合の事。  

                   2013年10月13日  日曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
 
 
    
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大正7年、日本の内地に米騒動や、炭鉱労働騒動が発生し、陸軍が治安出動

している頃、日本陸軍関係者は、いち早く共産主義の火を消してしまわないと、 

我が国の中に共産党が出来て、共産主義が蔓延することを非常に恐れたのでした。
 
つまり、共産主義は、天皇陛下などの存在を否定する制度で、天皇の軍隊の

皇軍を自負する陸軍には、とうてい受け入れがたい制度だったのです。
 
 
 
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場所は変わって、 日本から、大連に船で渡り、 中国大陸の奉天から、満鉄に

乗車して、 一路 東に進みますと、満州のハルピンという都市に到達します。
 
 
 
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上の地図の一番上の十文字に、鉄道が交差しているところですが、 ここは、

シベリアからの鉄道と、モンゴルからの鉄道と、 ウラジオストックからの鉄道と、

奉天からの鉄道の交差する鉄道交通の要衝で、当時はこの地方の経済拠点

だったのです。
 
三好宏明陸軍少尉は、ハルピンの特務機関の入っている、 泰平組合 ハルピン

支店の建物に出頭命令を受けたのでした。
 
 
 
 
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                   【  当事のハルピン市内の様子 古写真  】
 
 
泰平組合とは、たいへいくみあい と読んで、 表向きは、三井物産と、大倉商事、

高田商会の日本の財閥が合同出資した、貿易会社でしたが、 その貿易会社の

中に、経済研究部というのがあって、ここの部署が、陸軍の特務機関、つまり、

スパイ組織の事務所になっているのでした。
 
この泰平組合は、その後、昭和12年から、昭和通商と名前を変えて、支那事変や、

南方の特務工作で、活躍していくのですが、そのお話は、又後日、紹介させていた

だきます。
 
 
 
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このハルピンという都市は、交通の要所であるとともに、日本、ロシア、アメリカ、

などの商社が進出していて、 現在はどうか知らぬのですが、当時は日本の大阪

のような、経済都市でした。
 
 
ここを舞台として、日本陸軍 ハルピン特務機関は、諜報、暗殺、密輸、偽札、いろん

な特務工作を関東軍の参謀長の指揮下で、進めていき、その活動は、現在でも暗い

闇に包まれています。
 
 
 
 
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泰平組合 ハルピン支店に出頭した、三好少尉は、支店長こと、 陸軍少将 黒澤

 準に呼び出されたのでした。
 
 
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敬礼をすると、「 ご苦労、 命令。」と、大きく叫ばれ、かがとをそろえて、直立不動

で、黒沢少将を見つめたのでした。
 
黒沢少将は、 「 陸軍少尉、 三好宏明  本日より、 陸軍 浦塩派遣軍 参謀

本部附、浦塩特務機関員を命ず。」 と、命令書を差し出し、三好少尉に手渡した

のでした。
 
しばらくして、地図を広げ、説明が始まったのでした。
 
 
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「貴様は、これから、ハルピン駅から、鉄道に乗って一路、南下し、ロシア領、ウラ

ジオストックに、向かえ、 現地に着くと、 横浜正金銀行ウラジオストック支店

に行き、 ここの二階の建物の一室を、泰平組合、 浦塩支店 と言うことで、開設

の準備を行え、 浦塩派遣軍の高柳保太郎少将が、 浦塩特務機関の機関長に

なる予定であると聞いているが、 近いうちに、向こうから連絡があるだだろう。」と

言いながら、  黒沢少将は、一丁の自動拳銃を差し出したのでした。
 
 
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この拳銃は、 陸軍で開発した、南部式という拳銃だ、引き金を引くと、自動で、

次弾が装填される我が国の新兵器でもある。
 
残念な事に、日露戦争前に開発されたのだが、予算不足もあって、制式には採用

されておらん、使い方は、こうだ、  まず、弾層に実弾を上から押して入れていく、

そして、下から、差し込んで、ここのボタンを、親指で押すと、 弾層が抜ける、 後

のつまみを、小銃のように、引いて、又、前に押し戻すと、薬室に実弾が装填され、

あとは、引き金を引くだけだ、このつまみを、小銃と一緒で、まわすと、安全装置が

かかるようになっておる。   もっていけ。」 と、三好少尉に手渡したのでした。
 
 
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  「 実は、ウラジオストックに、海軍の陸戦隊が、上陸するらしい、 その前に

ウラジオストックに入り、 特務の作戦を遂行するとともに、 先の日露の大戦で、

古くなった、30年式小銃などの武器弾薬、 それから、貴様に先ほど手渡した、

自動拳銃などを、ロシア革命で、戦争を始めた、ロシア人に、武器、食料などを

販売し、 特務工作資金を捻出していくのが、泰平組合 浦塩支店の表向きの

仕事だ。
 
すぐ支度して、ハルピンを発ってくれ、 途中で、 つなぎの連烙員が接触する、

 合い言葉は、「 うぉーーーしーーとぉーーしゃぉーーちぇん。」 反対語は、

 「ちょーこ いーーぱいちぇん。」だ、 
 
貴様、1度言って見ろ。」と、黒沢少将が言うので、三好少尉は、「 ぅぉーしー

とぉーしゃぉーーちぇん。」「 ちょーこ いーぱいちぇん。」 と言うと、 「忘れるなよ、

 それから、死ぬな。健闘と武運長久を祈る。以上だ。」と、命令伝達と、説明があり、
 
 
三好少尉は、泰平組合 ハルピン支店を後にして、ハルピン駅から 
 
 
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   鉄道に乗り込んで、 一路、ウラジオストックに向けて、出発したのでした。
 
 
 
【次回に続く。】