第756回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第755話 海軍兵学校 東郷元帥副官の事。 2014年3月18日 火曜日の投稿です。
戦艦 摂津【 せっつ 】は、 伊予灘までの練習航海を終えて、12時方向、正面に、宮島をのぞむ
海域に達していたのでした。
艦長の小山田 繁蔵 海軍大佐殿【海兵27期卒 後の海軍中将 岩手県出身 】が、「 摂津に
着任早々、殿下に御乗艦いただき、 光栄の至り、 なかなか見事な当直士官ぶりでありました。」
と、声をかけられると、高松宮殿下は、「 そちに褒めてもらうと、世はうれしい、 なかなかおもしろ
かったぞ、 ところで、そちは、 摂津の艦長を拝命してすぐであったのであるか。」と、お尋ねになり、
小山田艦長が、「 はっ、 今月の20日に摂津に着任したばかりであります。」と、 申し上げると、
教頭の、長澤 直太郎 海軍大佐殿が、「 小山田 海軍大佐は、かの有名な、東郷平八郎元帥の
副官を長らく務めておりましてーーー。」と、お話しすると、高松宮殿下は、「本当であるか。」と、
目を輝かして、お尋ねになり、「 世も、元帥を尊敬しておる、 東郷元帥の話を、聞かせて
もらいたい。」と、 おおせになり、 小山田艦長も、 ニコニコしながら、お話をしていたのでした。
しばらくすると、教頭の長澤 海軍大佐殿が、 「 殿下、明日は、土曜日で殿下は呉の金谷の
御用邸でお過ごしになるのですか。」と、御尋ねになると、殿下が、「 どうしたのであるか、なにか
用事でもあるのか。」と、逆におたずねになり、「 実は、明日は、52期の生徒だけで、呉鎮守府の
見学授業を予定しておりまして、 もしよければ殿下もご一緒されてはと思うのですが。」と、
お話しされますと、「 世も行きたいのであるが、何事も、山内【 山内 源作 傳育官】に聞かねば
きめられぬのじゃ。」と、おおせになったのでした。
「 そろそろ、津久茂瀬戸が近い、 速力を減速じゃ、 見張士官、周囲の状況知らせ。」と、
伝声管にさけばれ、 上の伝声管から、「 周囲に艦影なし、 左弦宮島、距離300
「 両舷減速、 半速【 時速約14キロ程度 】前進、 よーーそーろーー。」と、命令を出され
戦艦摂津は、津久茂瀬戸に向かっていったのでした。
【次回に続く。】