第796回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第795話 海軍兵学校 運用考査の事。 2014年4月27日 日曜日の投稿です。
海軍兵学校に入学して、4ヶ月目、 いよいよ、日頃の訓練の成果を見せる時が来たのです。
当日、晴天で、冬の良い天気であったのですか、海辺特有の冷たい潮風が身にしみたのです。
まず、私達が考査を【戦後で言うテスト、試験の事】受けましたのは、 ロープの結び方が
1人でちゃんと出来るかどうかと言う事だったのです。
以前紹介したのですが、 読者のみなさんに復習をかねまして、紹介しますと、
船着き場に、船が接岸しますと、船からロープを投げまして、 接岸場所に、ロープを
張って、船を固定するのですが、 上の写真の様な、ロープをかける場所を、【もやい】
と言います。
ここに、ロープをかける結び方を、私達は考査を順番に受けていったのでした。
この結び方、なれるとそうでもないのですが、 なれるまでが大変でありまして、
私達は、 一通り、 結びまして、 監事附殿から、「 よろしい。」と、完遂
の許可をいただきまして、 一番最後に回ったのでした。
次は、ランチのおろし方の考査でありまして、 ランチが斜めにならないように、
水平に、保ちながらおろしていくわけです。
この作業は、1人だけでなく、作業する全員が息が合っていないといけません。
又、作業の指揮をする人間の号令のかけ方なども、採点の1つでありました。
私が、戦後の映画やテレビドラマが、海軍兵学校のランチの漕艇訓練を取り上げて
いる映像は、絵になるからか、全員でオールをこいでいる様子が多いのですが、 私達の
当時は、ヨットのように帆をたてて、上手に風を利用して、 ランチが操れるかと言う事が、
考査の採点の1つでした。
自然の動き、風の方向を悟り、 帆を動かして、 斜め前に進み、又、帆を
動かして、 こんどは、又反対の斜め方向に、ランチを操舵していくわけです。
これが、なかなか難しい物でして、随分難儀をする、分隊が続出し、
ハンモックナンバーの多い、私達は、ずっと、 その有様を海岸から
見ていたのです。
「 今日は、潮風がきついので、 ずいぶん北に、流されそうやな。」と、
話をすると、福元 義則生徒が、「 ほんまでごあす、 ほいこら、あそこの
分隊のランチ、 風を上手に受けて、 快調にすすんでおりもんす。」と言うので、
見て見ると、源田の乗り込んだランチでありました。
彼は、何をやらしても、上手でありました。