第916回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
私達が、江田内の湾内で、ランチで隊列を整えていた頃、 海軍兵学校の通用門
では、 呉から来賓で来られた、呉鎮守府の高級将校や、広島の西部軍司令部の陸軍の
高級将校が来賓でお越しになり、 その他、呉の停泊中の艦艇から、続々と、普段お話が
お越しになったのです。
中には、 広島の政財界の身元調査して問題なしと判断された、議員の人達や、 いろんな
人が、招待されていたようですが、 一般の人は残念ながら入れなかったようです。
ただし、 兵学校に勤務している民間職員の家族などは例外でして、 身元も、保証人も
確かと言うことで、 参観が許されたようです。
そんな、兵学校内の、混雑とは、距離を置いて、江田内の湾でプカプカと停泊して、
英国の皇太子とかの船はさーーいつ頃こちらにつくんだい。」と、 質問するので、
私が、「 そうやなーー。」と、 言っていますと、 「 ぴぃーーーーーーーっ。」と、
大声で叫ばれたのです。
どうみても、外国の近代的艦艇が、2隻 つづいて、縦従陣で入港してきたのです。
私は、「 ほうーーーーあれが、大英帝国の軍艦かいな。」と、 まだ姿が小さい
巡洋艦を眺めたのですが、 どんどん近づいてきまして、 その姿に私は驚いた
のです。
私達はその当時、外国の艦艇を見るのは初めてであったのですが、印象に残って
いるのは、 砲塔に、砲身が3門あることでして、 日本海軍の砲身が2門という、
常識と考えていた私達は、驚愕したのです。
そして、2隻目の巡洋艦も入港し、 見物していると、 砲身が上に上がっていき、
「 3門の砲ちゅーーんは、 すごいもんやなーーー。」と、 周囲の生徒と、嬉し
そうに雑談していると、 艦橋で、乗組員が旗を振ると、 「 ズカッーーーーーーンッ、
ズカッ、ズカッーーーーーンッ。」と、砲身から、白い煙が、わき上がりまして、江田内に
祝砲の音が鳴り響いたのです。
祝砲は、全部で、15回程度ですか、 もう少し鳴っていたかも知れませんが、
私達は、驚いた表情で、 初めて見るイギリス帝国海軍の巡洋艦2隻を眺めていた
のでした。
【次回に続く。】