第970回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第969話 田中 義一 陸軍大将の壮丁読本【そうていどくほん】の事。
2014年10月18日土曜日の投稿です。
田中 義一 陸軍大将は、 シベリア共和国の金塊を隠密に略取し運搬し
栃木県の連隊の倉庫に搬入を済ませた 高柳 陸軍少将に対して、 陸軍中将
に推挙することを約束し、今後の自分の方針について、語り始めたのです。
そして、手渡したのが、自分が陸軍中将の時、執筆した、【 壮丁読本 そうてい
どくほん】と呼ばれる一冊の本を手渡したのです。
「 昨年、我輩は、胸の病で、療養生活をしたのであるが、人間、人生にも限りが
ある。
「 与党、政友会の総裁の 高橋 是清 と言う男は、 横浜正金銀行の出の銀行
屋だが、金融の専門家で使える人物であるが、 先の内閣の運営を見ていると、
政治家としては力量不足と言われても仕方がない結果となった。」
「 そのことは、当の本人が1番痛感しているであろう。」
「 我輩は、 これから陸軍の運営を、この宇垣に任せて、予備役となり、貴族院
議員となり、高橋 是清と同盟を結び、 我輩が不慣れな、 大蔵行政を高橋に
任せ、我輩が、与党、政友会の総裁になり、 現在三派に分裂状態の政友会を
ひとつにまとめて、まずは、内閣総理大臣となり、 陸軍と、政界をまとめて、
海軍と話をしながら 政事を進めていく、 これを一段作戦とし、残念な事に、我
が神州、日本は、 鉱物資源、燃料資源に乏しい国土である。」
国土とし、基盤造りを進め、その後、 中国西、南部に、武力侵攻して、ここを併合
せしめ、 清時代と同様の国土を有する、 大帝国を作り上げる。
そして、原料から、工場製品に至るまで、 一貫して自給自足できる体制を整える。
これを 二段作戦とする。
その後、 国力を整え、 兵力を充実させ、 化石燃料の埋蔵されている、蘭印
攻略し、 南方資源地帯を占領せしめ、 南太平洋全域を手中に収め、その後、
インドを目指して、 進撃し、 これを占領して、 国土の拡大を図っていく。
これを、三段作戦とする。」
こんな、 今後の構想の説明がありまして、 宇垣 一成 陸軍中将と、高柳
保太郎 陸軍少将は、 無言で、この作戦構想を、聞いていたのです。
この一冊の薄い本は、 その後、陸軍の統帥派と呼ばれる、 長州閥を母体とし
た陸軍の派閥のバイブルとなっていき、 【 田中 ドクトリン】 と呼ばれていき
ました。