第1095回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第1094話 高松宮殿下の小銃と弾薬の事。 2015年2月20日 金曜日の投稿です。
高松宮殿下は、 射撃大会当日、大変なご機嫌で、 ニコニコされ楽しそうな姿で
ありました。
殿下は、「 西村 【西村 文雄 二等軍医】 見て見よ、 世としては上出来じゃ。」 と、
ご自身が射撃された点数に随分満足されたようです。
自分もそうでありましたが、 第52期の生徒の中では、最年少で、周囲は1歳から3歳年上
の生徒ばかり、 ひとつ上のクラスの第51期の生徒は、さらに年上の生徒ばかりの中で、
それらの生徒を上回る射撃の点数が出たわけですから、 周囲の生徒も、「 殿下は、すごい。」
と、思ったわけです。
分隊全員が、 よい射撃点数を出して、 当日の射撃大会で優勝することになったのです。
ところで、 昭和になって、ずいぶんして、御学友の1人であった、末国 正雄生徒の
殿下は、 上機嫌となり、 周囲の生徒に ご自身の小銃を貸し出したのだそうです。
「 佃、 世の小銃を貸してつかわす、 撃ってみよ。」 と、 こんな感じであったそう
ですが、 「 で、 貴様、その先、 どうなったのか。」 と、聞いてみますと、
小銃で射撃すると、 殿下が27点だったのですが、 33点という、高得点を出したそうで、
実は、 この小銃には、カラクリがあって、 当時は 他の生徒は知らなかったのですが、
殿下の小銃は、通常の小銃とは違い、 引き金の部分が軽く改造してあって、
銃身も、精密射撃用の特製銃身で、 用いる弾薬も、精密射撃用の弱装弾であったようです。
射撃をしたことのある人はわかると思うのですが、引き金が堅いと、少しひいたときに、
小銃がぶれるのです。
そう言うわけで、 小銃の引き金を引くときには、 少しずつ、徐々に静かに搾って、
引き金を引く、 これは射撃では常識なのですが、 殿下の小銃は、なめらかに引き金が
引けるように、 柔らかく調整されていて、 銃身の内部には、 ライフリングという、らせん
状の凹凸があるのですが、精密射撃用の彫りが深い物が、取り付けてあったようです。
そして、反動の少ない、火薬の量を減らした、 射撃用のワイドカッター弾で撃っていたようで、
反面、自分達は、銃身も古い物で、 引き金は堅いノーマルで、 強装弾と呼ばれる
火薬がたくさんはいっている小銃弾で、 反動がきついわけですから、よい点数が
出るわけがないのですが、 大正時代の当時は内々にされていたようです。
【 通称 高松宮御殿 と呼ばれていた 特別官舎 】
新車が到着して、午後の射撃大会で気分をよくされた高松宮殿下は、 上機嫌で
兵学校の周辺で新しい自転車を乗って、楽しまれていたのです。
【次回に続く。】