第1100回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
大正12年3月1日 木曜日は、随分寒い日で、 海からの冷たい潮風に乗って、
粉雪が舞うような,そんな寒い日でありましたが,早朝から、ボートの訓練などが
空が暗い頃からあって、 寒い中 訓練に励んだのです。
ところで、 午前中は学科の授業があるのかと思っていたのですが、 どういうわけか、
体格検査というのがあって、 寒い中、 上着を脱がされて、軍医殿の身体検査があり、
今度は、昼前からは、 東京の海軍軍令部に、教官、監事の 藤澤 海軍中佐殿が、
転勤されることになり、 裏の通用門に、お見送りすることになったのです。
藤澤 海軍中佐のご婦人は、当時、 大きなお腹の妊婦さんで、この寒い中、
鉄道で揺られて、 東京に行かれると聞いて、 心の中で「 大丈夫であろうか。」
と心配したのです。
そして、午後、 どういうわけか、全校一斉清掃の命令が発令され、 寒い中、
手洗いから、練兵場まで、念入りに清掃をさせられたのです。
通常は、 土曜日の午後に 大掃除があるのですが、 木曜日に掃除が繰り上がる
というのは、だれか、偉い人が来られる前か、 なんらかの行事の前に、大掃除が
行われる事が多く、自分達の分隊の中では、 みんな 頭の中で、 口には出さず
そんな事を考えていたのですが、 軍隊という所は、事前に目的などの説明などはなく、
海軍生活に慣れてきたというか、 命令を着実に遂行するのみで、 寒い中、校内の
清掃に励んだのです。
そして、翌日の大正12年 3月2日の金曜日の朝の訓示で、 もう一度念入りに、
午前中、大掃除をすることと、 午後から、陸軍士官学校の校長先生が、 我、
海軍兵学校に講話をしに訪問されるという伝達があったのでした。
どんな校長先生の陸軍軍人の将官が来られるのか、 随分楽しみに思ったのです。
【次回に続く。】