第1185回 昭和の伝道師【 戦中、戦後のパイロットの物語】

第 1184話 関東大震災のイギリス東洋艦隊の事。 

                                                         2015年5月22日 金曜日の投稿です。








1923年 大正12年の9月5日の夜間、 横須賀鎮守府 司令長官の野間口

 兼雄 海軍大将と、草鹿 龍之介 海軍大尉が、 長官公邸の芝生の庭に萱

【かや 虫除けの網の事】を吊って寝ていた頃、 聯合艦隊 旗艦 長門【ながと】

は、全速力で浜名湖の沖合の太平洋を東に、東にと航行していたのです。



イメージ 1



        
 夜明けと同時に後方から発光信号があり、 通信参謀が電文を 聯合艦隊 

参謀長の 白根 熊三 海軍少将に報告を行ったのです。

「  後続の日向から 信号受信せり、 水平線に外国艦の艦影見ゆ。」 と報告が

あったのです。




イメージ 2



   【  関東大震災 当時  聯合艦隊 参謀長 白根 熊三 海軍少将  】



 「 通信参謀、後続艦の 伊勢の 漢那 【 漢那 憲和 海軍大佐の事】艦長に 

 発光信号、 日向に、 艦種、詳細知らせ。以上。」と、 近づいてくる艦艇の

 確認を指示をしたのです。



イメージ 3
   



 白根 聯合艦隊 参謀長は、 竹下 勇 聯合艦隊司令長官に対して、 艦隊の

 速力を落とすよう 意見具申を行われたのです。





「 長官、 この新造艦の 長門は、 対外的には 速力が23ノット と発表されてお

ります。  後方から接近する 外国艦艇に追尾を受け、27ノット以上速力を出して

おるのを知られますと、 機密が漏れることになります。

少し減速をして、 後方から近づいてくる 外国艦艇を 先に進めてはどうでありま

しょうか。」  と、意見を具申されたのです。



イメージ 5



      【 関東大震災当時の 聯合艦隊司令長官 竹下 勇 海軍大将 】



 夜明けを眺めていた竹下司令長官は、 白根 参謀長の話を聞いて、「 参謀長、

 呉に 荷を積みに回った、陸奥の見間違いではないか。」 と問うと、

 白根 参謀長は 、 「ただいま子細を確認中であります。」 と言う。



イメージ 4
 


    「 5時の方向、 距離 約3千メートル 外国艦艇 接近、 発光信号を

     発信中。」

    「 ワレ イギリスカイグン ダーバン キカンニツヅク。」 


          
イメージ 6
         


    【 関東大震災時、 支援活動を行った、イギリス東洋艦隊 ダーバン 】


          
          
  この報告を 通信参謀から聞いた 竹下長官は、 長門の艦長の高橋 節夫

  海軍大佐に 速力を20ノットに落とすよう命令を出したのです。

  高橋 艦長は、「 後方の 伊勢、日向に信号旗あげ、 両舷減速、速力20

  信号急げ。」 と命令を出したのです。




イメージ 7
 



ここで読者のみなさんに わかりやすく説明すると、 上の様にぞろぞろつながって

艦隊が航行することを 縦従陣 航行と言って、 先頭の艦艇は、 減速する場合は、

後方の艦艇に、信号旗と 発光信号で 減速することを 伝えてから 減速を行わ

ないと衝突すると言う事故になっていくのです。

例えば ミッドウェイ海戦 2日目に 栗田長官の 巡洋艦隊が、 信号旗と 発光

信号で後続艦に連絡して、 速力変更をおこなたのですが、 最後尾の 最上

【もがみ】が、信号を受信損ねて、速力を落とさなかったので、 前に航行していた 

巡洋艦三隈【みくま】に追突して、艦首を大破し、 三隈が航行不能になると言う

事件がありましたが、 同様な事になっていく危険があるのです。





イメージ 8




【  関東大震災当時、聯合艦隊の旗艦であった 戦艦 長門  艦長 高橋 

節夫海軍大佐 】



ところで、 戦艦の速力というのは 当時は 極秘中の極秘事項で、 海外の軍隊に

最新兵器の速力を知られると まずかったのです。

そこで、竹下司令長官は、 艦の減速を命令されたのです。

当時、対外的には、 長門は22ノット 【 時速 約43キロ程度】の速力と発表され

たのです。


イメージ 9


    


  ところで、関東大震災から5日後、 初めて海外からの災害支援というのは、

  当時の大英帝国、 イギリスの東洋艦隊が 救援物資を搭載して支援に駆け

  つけてくれたのです。

 竹下聯合艦隊司令長官一行は、 イギリス海軍のダーバンと続いて 横須賀を

 目指して、 太平洋を航行して行く事になったのです。



          【 明日に続く。】