第1211回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
にくれていたのです。
「 なあーー、白川、軍事参議官の 福田 雅太郎を、関東戒厳司令官に据えた
のは我輩の間違いであった。」 と、 語り始めたのです。
の知らぬところで、 民間人の意図的な 抹殺事件が起き、 時間だけがどんどん
過ぎていったのです。
ちょうどその頃、ある陸軍中将が、 田中 陸軍大臣を訪ねて、やってきたのでした。
「 大臣、 姫路師団の 師団長が面会を求めて来られております、いかが
いたしましょうか。」 と、副官が問うと、田中陸軍大臣は、「 よし、すぐ通せ。」
と指示を出し、 「 閣下、 宇垣であります。 姫路から部隊を連れて
到着いたしました。」 と、 当時 姫路の第10師団長であった、宇垣 一成
陸軍中将が、面会に訪れたのです。
【 関東大震災当時 姫路第10師団長 宇垣 一成 陸軍中将 】
「 おい、宇垣、西からの道中、東海道はどうであったか。」 と、田中陸軍
大臣が問うと、 「 はっ、沼津あたりまでは、鉄道が通っておりますが
そこから先は、 道路も、鉄道もずたずたでありまして、岡山、姫路、鳥取
の連隊から 兵力を抽出して、 駆けつけてまいりました。」と、話すと、
なって、 まずいことになった。」と、 言うと、「 何があったのでありますか。」
と、宇垣陸軍中将が問うと、「 実はなーーーー云々。」と、 亀戸警察署
の事件や、 淀橋警察署での事件の顛末を田中陸軍大臣は、宇垣陸軍中将に
話して聞かせたのです。
そして、 「 宇垣、 我輩は貴様を頼りにしておる、なにか良い策はないか。」
と 田中 陸軍大臣が問うと、 静かにしばらく 腕組みをして考えて、「 うーーん
そうですなーーーー、 自分が陸軍大臣なら、 こうします。」 と、対策を語り
始めたのです。
「 この度の事件を利用して、陸軍大臣が事件の調査と、事態の収拾に
自ら乗り出し、 そして、この事件の実行者を陸軍の看板、 憲兵隊の
看板を傷つけないように 厳重に処分する事が肝心であります。
そして、 陸軍の上原 参謀総長 一派の軍人を 一掃し、閣下の配下と
置き換えていくのです。」 と 宇垣 陸軍中将が語り始めると、
田中 義一 陸軍大臣は、 「 宇垣、 我輩は貴様の作った船に乗るので
お前の考えで、 船をつくってみい、 頼りにしておるぞ。」と語り、
宇垣 陸軍中将は、事件の対策を 田中陸軍大臣と、 白川 陸軍次官
に語り始めたのです。
【 明日に続く。】