第1243回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第1242話 関東大震災 今村 均 陸軍少佐の事。2015年7月27日月曜日の投稿です。





   1923年 大正12年9月21日 陸軍参謀本部参謀総長、河合 操 陸軍

  大将は、 上原元帥の副官の 今村 均 陸軍少佐と一緒に陸軍省を訪れ、

  田中陸軍大臣に対して、内閣に、 東京から 地震災害の少ない 京城への

  遷都計画を申し入れたのです。




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             【  関東大震災当時の陸軍大臣 田中 義一 陸軍大将 】



       「  けっ、けいじょう【京城】。」  と、みけんにシワを寄せて、田中 

    陸軍大臣は難色を示したのです。

    京城というのは、 朝鮮半島の現在のソウルの事で、 陸軍から、東京を

    すてて、 朝鮮半島に遷都しようなどと言うことを、 内閣に申し入れるという

    話に抵抗を感じたのです。

    河合 陸軍参謀総長に、田中陸軍大臣は、「 どうして、京城なのか、

    その根拠は。」と 問いただしたのです。

    河合 陸軍参謀総長は、「 詳細は、 この今村が説明申し上げる。」と言うと

    後に控えていた、今村少佐は、 地図を広げ、 田中 陸軍大臣、 白川陸軍

    次官に説明を始めたのです。




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                     【  今村 均 陸軍少佐 】


       話を要約すると、 上原元帥の命令で、 水害、地震、台風などの災害が

       少なく、ある程度平野があり、首都機能の移転可能な地域を 陸軍参謀

       本部の参謀が研究したところ、 第1の候補地として、 京城の竜山付近、

       第2の候補地として、 兵庫県加古川付近という結論にいたりーー

       云々と その候補地に至った経過の説明が詳細にあったのです。




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       黙って静かに聞いていた 田中陸軍大臣は、「 参謀総長、よくわかりました。

       上原元帥には、 元帥のおっしゃるように、参謀本部の意見を 陸軍大臣

       として内閣に 我輩が奏上しよう、がっ、 大杉 栄の事件については、

       極力、 元帥の意向を尊重するが、 実行部隊の甘糟だけで、事件が

       治まらぬ場合、 小山、 そして さらに それでも収拾がつかぬ場合は

       小泉 に 腹を切ってもらうようになるやも知れぬ、 なるべくそうならぬ

       ように、 我輩も 手を打つつもりであるとお伝えください。」と、語り、

        
        河合参謀総長と、 今村 陸軍少佐を 部屋から送り出したのです。 






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            【  当時の陸軍次官 白川 義則 陸軍中将 】



      黙って静かに話を聞いていた 白川陸軍次官が、「 閣下、京城への遷都

     など約束されて どうされるおつもりですか。」と、問うと、田中 陸軍大臣は、

     「 なに、そんな話、内閣に出しても潰れるに決まっておる、よって、話を

      このまま長時間聞いても時間の無駄と思い、 了承して、早期にお帰り

      願ったまでの事である、 考えてもみよ、日清、日露の戦争で、大本営

      置かれた 広島や、 以前 都であった、京都や、奈良ならともかく、 

      朝鮮半島京城に遷都など、 話が通るわけがない。

      そして、そのような遷都にかかる 費用など、大蔵省の国庫には現在

      残っておらぬし、 閣僚も反対するに決まっている。 ところで白川、



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       あの 今村とか言う、少佐は何者か。」と 問うと、 白川 陸軍次官は、

      「 はっ、閣下、 東條の 一期後輩の陸軍士官学校の19期卒の 陸軍

      大学27期の首席卒、 恩賜の軍刀組の男で、 昨年より 陸軍参謀本部

      入りし、現在 上原元帥の 副官を務め、相当なやり手の男だそうです。

      聞いたところでは、陸軍大学で 居眠りをしていても、成績はダントツ1番で

      他の佐官や、尉官でかなう者がいない程度の頭脳の持ち主だそうで

      あります。」 と、説明すると、 田中 陸軍大臣は、「 あの工兵オヤジの

      御側用人が、全く困った事だ。」 といいながら、この東京から京城への

      遷都計画は、数日後、内閣総理大臣の山本 権兵衛 海軍大将に提出

      されることになって行ったのです。


      【 明日に続く。】