第1246回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第1245話 関東大震災 帝都復興院の事。2015年7月30日木曜日の投稿です。





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    1923年 大正12年9月24日の月曜日、陸軍参謀本部京城への

  遷都計画を推進していた当時、 御前会議前日に、 後藤 新平 内務大臣

  が、事前調整のため 陸軍省の 田中 義一 陸軍大臣に面会を求めて来た

  のです。



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       後藤 内務大臣は、 摂政 東宮 裕仁殿下 【 せっしょう とうぐう 

       ひろひとでんか  後の昭和天皇】の 被災地視察に同行したりして

       当時の 摂政殿下の意向などを掌握し、 帝都復興についての具体策を

       内務省内に設けた、 帝都復興院 【ていとふっこういん】で検討して

       その後藤私案なるものを、田中 陸相に 事前調整に訪れたのです。



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              【   関東大震災当時の 後藤新平 内務大臣 】


     後藤新平さんと言う人は、 陸軍の児玉 源太郎系列の 官僚で、つまり、

     陸軍の長州派系列の お雇い官僚のような立場の人で、 元は、病院の

     医師で、 以前紹介したように、 板垣退助 公が、演説後 刺されて


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                      【  板垣 退助 公 】


    病院に担ぎ込まれた時に 診察した医師としても 知られた人でありました。


    後藤 内務大臣に面会した 田中 陸軍大臣は、「  おうーー、素案が

    出来たか。」 と、 後藤内務大臣から 報告を受けたのです。



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            【  関東大震災で 焼け野原になった、東京 南西部  】


         帝都復興院 のまとめた 災害復旧計画の骨子は、多くの土地建物

        を整理して、 焼け野原の南部 西部、 南東部を まず区画整理して

        その後訪れるであろう自動車時代のことを考え、100メートル程度の

        道幅を大きく取って、 防災の火除け地とし、 ここに 近代的な防災に

        強い 都市を構築しようという案でありました。

         反面、 これを実行した場合、 多くの立ち退きが発生し、 また道路

        建設や、 隅田川の護岸工事、 南部の海岸線の 防波堤の工事など、

        多くの防災工事が発生し、 その費用は多額の予算が必要であった

        のです。



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   田中 陸軍大臣は、 「 ほうーーー、 ずいぶん整理された都市計画じゃ、

   ここの 京橋付近の 道路の幅はどのくらいになるのか、 ここはどうなるのか。」

   と、質問を連発し、 「 うーーん、これなら、もし火災になった時でも、火が

   燃え続けることはあるまい、 津波が来ても、これだけ堤防の高さがあれば

   安全であろう。」 と 満足し、「 いゃあーー、 これなら良かろう。」と、太鼓判を

   押したのです。

   そして、 陸軍参謀本部の 京城への遷都計画が話題となり、数分この話が

   続いた後、 田中 陸軍大臣が、「 それから、 この計画を実行した場合、

   いくら予算がかかるのか。」と、問うと、 後藤 内務大臣は、「 東京だけで

   約30億円、 周辺の都市の災害復旧を考えると、倍の60億円はかかります。」




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                   【  田中 義一 陸軍大臣 】

         
       と言うと、 「 ろっ ろくじゅうおく円ーーーー。」 とたまげた顔をして

       「 はぁーーーーーぁ。」と、大きなため息を漏らしたのです。

       明治の後半の 日露戦争当時の国家予算が 2億円程度、 数年前の

       大量に国債を発行して、原 内閣が 選挙目当てで予算のばらまき

       政治を行った 大正10年当時で 国家予算が15億円程度であった

       その当時、 東京の災害復旧費用だけでも莫大な資金を必要として

       いたのです。 



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       すでに、日本は 西洋諸国から 借金のまた借金を繰り返し、戦費に充て

       もう借りるところがない程度負債が膨らみ、 原内閣の 高橋 是清

       大蔵大臣が考え出した、 国民のタンス預金をあてにした国債も、大きな

       金額に達し、 その利息の支払いにも難儀する程度 大蔵省の国庫は

       破綻に貧していたのです。



       【  明日に続く。】