第1429回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第1428話 兵務局長の一喝の事。 2016年1月31日日曜日の投稿です。







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  【  バイエルン州 第7師団 司令官 オットー フォン ロッソウ陸軍少将 】



   1923年、日本の大正12年の10月20日のベルリン政府の国防相

 発表した、 第7師団 司令官 ロッソウ陸軍少将解任の発令は、バイエルン

 州の指導者を憤慨させる物であったのです。

 当時、 3年前まで、 ドイツという国は、 いろんな地域の王国の連合体で、

 日本で言うと、江戸時代の幕藩体制がそのまま続いていたと言ったほうがわかり

 やすいいかもしれません。

  つまり、 いろんな地域に いろんな王様がいて、 個別に統治していたわけ

 です。


 
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                【 グフタフ フォン カール バイエルン州総督 】


    当時のカール バイエルン州総督は、ベルリンの国防相の命令を無視して

  みずから、 第7師団は、バイエルン州総督が管轄する、 師団であるとして、

  そのまま、ロッソウ陸軍少将や、幕僚を再度任命する総督命令を発令し、ベル

  リン政府と 対決する姿勢を示したのです。

  このような出来事があって、 ベルリンに本拠を置く、ワイマール共和国の

  エーベルト大統領一派と、 カール バイエルン州総督の一派は、対立して

  いったのです。



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   これらの出来事を 新聞で読んだ、ヒットラーや、リヒター元通信大臣や、

 ルーデンドルフ 陸軍大将達は、革命の好機が到来したと考えたようです。

 「 今、 バイエルン州総督を始め、ベルリン政府と対立する人達の力を結集し、

  ベルリンに進軍するのは、 今しかない。」と、 考えるようになって行ったのです。
 

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 当時、 カール バイエルン州総督達は、バイエルン州は、3年前まで、バイエ

ルン王国という独立国で、 その後も、そのつもりでいたようです。

 つまり、 ベルリン政府にどうのこうの指図がましい事を命令されるのは、

 バイエルンに対する、内政干渉であると考えていたようです。

 月が変わって、11月初旬、 バイエルン州総督の代理として、 バイエルン州

治安警察長官の ハンス フォン ザイザー大佐が、 ベルリンに赴いて、エーベ

ルト大統領に面会し、  第7師団 司令官解任命令を撤回するよう申し入れを

行い、関係者の処分を要求すると、 エーベルト大統領達は、この申し入れを無視

したのです。 



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            【 当時のワイマール共和国のエーベルト大統領 】


  そして、ザイザー大佐が、 ワイマール共和国の国防省に出向いて、命令を

取り消すように求めたところ、 兵務局長の ゼークト上級大将から、釘を刺され

たのです。



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       【 当時、ワイマール共和国の影の実力者 ゼークト 上級大将】  

 
   「 どうして、我々が、ロッソウ陸軍少将を解任したいか知っているかね。」と

   語り出し、 カップ一揆で逃亡した残党のリヒター元通信大臣や、 国家社会

   主義ドイツ労働者党の面々、 バイエルン闘争団などの民兵組織が、ベルリン

   に対して 反乱を起こそうとしている事実を ひとつひとつ、紹介していき、

   その中で、 第7師団 司令官 ロッソウ陸軍少将達の名前が出るに及び、

   反乱防止の為、第7師団 司令官を解任することを決定したと話して聞か

   せたのです。

    「 君は、バイエルン州の治安警察長官だそうだが、これらの動きは

     知った上で、 ベルリンに乗り込んで来たのかね。」 と、じろりと

    にらまれたのです。





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    そして、ルーデンドルフ陸軍大将が、これらの組織と手を結び、反乱に加担

   するように手紙を書いて各地の軍司令官、師団長、幕僚に対して、隠密に

   配布していると、 これらの書類を ザイザー大佐の前に差し出したのです。

   ベルリン政府は、 バイエルン州内の反乱勢力をほぼ把握しており、 もし、

   これらの輩が、ベルリンに向かって動き出した場合、 征討軍を差し向けて、

   武力討伐する事を 通告してきたのです。

   その場合、 カール バイエルン州総督 や、 治安警察長官である、君も

   反乱罪で処刑することになると、 脅迫したのです。



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   ベルリン政府は、 当時、隠密にヒットラー達の国家社会主義ドイツ労働者党

  や、ニーダ バイエルン闘争団の中に、諜報員を送り込み、 情報を収集し、

  動きがベルリンに筒抜けになっていた様です。

  ベルリンの 国防相の兵務局長 ゼークト 上級大将の「 いつでも、バイエルン

  州総督を武力討伐する準備は出来ている。」 との、 脅迫に対して、


 

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    その報告を数日後、 バイエルン州に帰国した、治安警察長官のザイザー

   大佐から聞くに及んだ カール バイエルン州総督は、 ベルリン批判や、

   対立を助長するような発言を控え、 数日前の勢いは、無くなっていったの

   です。

   ベルリン政府が自分の知らないような、ルーデンドルフや、ヒットラー達の

   武力革命準備などの動きを把握していることに驚き、 自分の周辺の情報が

   ベルリンに筒抜けになっていることを知り、考え混むようになって行ったのです。

   もし、ルーデンドルフ達が、暴走し、革命を起こすと、3年前にバイエルン王国

   に、共産主義政権が誕生し、ベルリン政府に武力征伐を受けた再来になるで

   あろうと考えるようになって行ったのです。  


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    ところが、 ヒットラー達には、 この話は伝わらず、 ベルリン政府を批判し、

   バイエルン州が中心となって、 ドイツを世直しして、 ドイツ民族を団結させ、

  不良外国人や、フランスを国外に追放して、 新しい強力な国家建設を叫んで

  行ったのです。



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    バイエルンの第7師団 司令官解任事件で、 溝が深まった、ベルリン政府と

   バイエルン州政府の確執を利用して、 行動を起こす好機が到来したとして、

   いよいよ、武力革命を起こしていくのです。


   【 明日に続く。】