第1526回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第1525話 ミュンヘンの裁判の事。 2016年5月27日金曜日の投稿です。
は、 冷たい鉄格子の牢獄から 引き立てられ、 ミュンヘン裁判と呼ばれる法廷に
姿を現したのです。
そして、 検察官より、 ヒットラーを辱めるような、経歴が紹介され、一方的な
事件への関与と、 罪状が長時間語られたのです。
法廷の傍聴席は、ドイツやヨーロッパの国々の報道機関のドイツ支局の面々が
所狭しと陣取り、 裁判の取材を行っていたのです。
新聞記者の頭の中の記事の見出しは、「 大悪党の武装蜂起の首謀者の
裁判いよいよ開始される。」 と、こんな感じの事を考えている記者が多かった
ようです。
ヒットラーは、 すっと立って、 後を向いて、周囲を見渡し、 わざと沈黙したの
です。
自分の発言する時間となって、 わざと沈黙するのは、ヒットラーがよく行って
いた 注目を集めるための手法であったのです。
これを 「 ヒットラーの沈黙。」 と呼んでいるそうですが、
傍聴席がざわつき、 その間は、ヒットラーは無言で静かに立ち尽くし、一分程度
して、周囲のざわつきが納まると、 右手の握り小節を胸にあてて、ヒットラーは
語り出したのです。
間違いない。 裁判長及び、 法廷内、 ドイツ全土の国民に申し上げる。
世は、 国家社会主義ドイツ労働者党の総統であるから、 世の知らない
場所での 党員による行為も含めて すべての事について 責任を取り、 その
行為について、 法を犯し、犯罪行為というのであれば、 すべての責任は。」
と語ると、 初めは早く、そして徐々にゆっくりと、両手を左右に広げていき
「 総統である世にあると考え、 党員や、ドイツの将来を憂い、 駆けつけてきた
愛國者や、同志達には 罪を問わないでほしい。
すべての罪は、 総統の世が取ることを申し上げる。」 とこうガラガラ声で
語ったそうです。
神 首席参謀のお話では、ヒットラーは、欧州大戦こと、戦後で言う、第1次
世界大戦の戦闘で 毒ガスにより負傷して一時失明し、そのような経緯からか
声がガラガラ声であったのだそうです。
翌日や、 翌々日の新聞の見出しには、 「ヒットラーすべての罪を認め、
そのすべての罪を 1人でかぶる。」 と言う見出しで、新聞に紹介され、
人々の関心を集めることになって行ったのです。
ナチ党の他の幹部や、 ルーデンドルフ元陸軍大将らが、自己保身に走り、
すべての罪状に無実を主張し、 他人に責任転嫁したような 申し立てを繰り返し、
それらのことが報道され、 人々はうんざりし、 そう言う行為に対して軽蔑し、
嘲笑していたところに、 ヒットラーの 「 すべての責任は自分にあり、自分が
知っている事、 自分の知らない場所でのすべての行為について、他の人に
対して 罪を問わないでほしい。」 との 冒頭の申し立てに対し、当時の新聞
記者は興味を示し、 ドイツ全土の国民も、「 ヒットラー 潔し。」 と 好感を
持ったのです。
このような報道がされると、 ナチ党の党員や、支持者がミュンヘンの裁判所
につめかけて、 それまで取材に来ていなかった他のドイツの新聞記者などが
どっとミュンヘンの裁判を取材を行う為に 訪れたのでした。
【 明日に続く。】