第1595回 昭和の伝道師【 戦中、戦後のパイロットの物語】

第1594話 岩国沖での出来事の事。 2016年8月6日土曜日の投稿です。





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  それぞれ少し時間を開けて、広島県の江田内を出港した 当時の練習艦

は、源田達の乗艦している出雲を先頭に、 私達が乗り組んだ 八雲が続き、その

後、 高松宮殿下が座乗する 旗艦 浅間と続いたのです。

 私が乗り組んだ八雲は、 いろんな人々に見送られて、津久茂水道を微速前進

で通過し、 左に転舵して、奈佐美瀬戸を通過して、出雲の後を追いかけたです。




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  そして 出雲と合流し、岩国の南東の甲島と、手島の広い水域で旗艦 浅間を

待つことになったのです。


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そうしていると、 ラッパ信号が鳴って、「 全員手の空いた物は右舷に整列せよ。」

と命令が発令されたのです。

私達は、急いで整列し、 何をさせられるのかと思っていると、 水平線に艦影が

現れたのです。



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  それは、呉軍港に向かう 第2水雷戦隊の数隻の艦艇であったのです。

手旗信号で、 「 カンタイノ コウカイノ ブジト ケンコウヲキネンス。」と、 

信号が送られて来たのです。



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「ほーーう、 どこの部隊かいな。」と、私がつぶやくと、 玉井 少尉候補生が、

「 ありゃーー第2水雷戦隊じゃ。 長澤閣下の水雷戦隊よーー。」と言うのです。


信号の発信者は、 第2水雷戦隊の司令長官 長澤 直太郎 海軍少将であった

のです。


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 私達が 海軍兵学校に入校したときの 教頭 兼 監事長 であった人です。

私達は、元教頭先生の座乗している 水雷戦隊に、帽子をふって、 答礼したの

です。

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   私達、海軍兵学校 第52期の八雲部隊は、 偶然すれ違った 元教頭先生の

水雷戦隊の信号に 多いに感動し、いずれは 長澤閣下のような司令長官になり

たい物だと みんな思ったのです。 

ところで、右舷に整列していた私達は 見えなかったので知らなかったのですが、

後日聞いたところでは、 答礼の信号の内容は次の如しでありました。



 「  ワレ アラナミニ モマレテ レンセイチュウ カンシャ カンシャ。」 だった

そうです。

私達の練習艦隊は、旗艦 浅間の合流を待つことになったのです。


【 明日に続く。】