第1605回 昭和の伝道師【 戦中戦後のパイロットの物語 】

第1604話 日本海軍の集団行動の事。2016年8月17日水曜日の投稿です。





イメージ 1




  ところで、私達は、鹿児島県の桜島に上陸して、番号点呼を行って整列する

事になったのですが、 当時、 練習艦隊の装甲巡洋艦 八雲 【やぐも】の末席

分隊長の 鬼塚 海軍大尉殿の説明というか、訓示を聞くことになったのです。

八雲の分隊長の末席と言うと、 どういうことかというと、 八雲の艦長が、海軍大佐

そして、副長が、海軍中佐、 そして、分隊長というのは、海軍少佐から海軍大尉が

任命されることになっていたのですが、 その1番、後というか、 最後の身分の分隊

長であったのですが、 戦後の会社社会組織に例えると、部下が60人程度の課長

さんと言うところでしょうか。

鬼塚海軍大尉は、私達より5期上の海軍兵学校第47期卒で、当時27才程度の

年頃であったのです。


イメージ 2



  そして、 鹿児島の出身で、 鹿児島第2中学の卒業生で、そのような事情から

当時、推測ですが、 「新米少尉候補生を桜島見物に案内せよ。」と、副長あたり

に命令されたのではと、思ったわけです。

当時の記憶では、 桜島の説明などは、 私と同期の部隊指揮官 赤塚 栄一

【後の 白濱 栄一海軍大佐の事】 少尉候補生 部隊指揮官に任せっきりで、なに

ひとつ語らなかったのですが、 集団行動という事について、私達の前でお話が

あったのです。

 早い話が、「桜島見物で、 迷子にならずに、ちゃんと行動せよ。」と言うお話で

あった訳です。




イメージ 6
 



  みなさんも、大なり小なり、経験があると思いますが、旅行ツアーなどで、バスに

戻って、人員点呼を行うと、 1人足らないとか、 2人戻っていないとか、 こう言

う事がままありますが、 ある旅行会社の人が、「 この中で 血液型がB型の人、

手をあげてください。」 などと 言う物ですから、 手をあげずに見ていると、「 

B型の人は途中で行方不明になる事が多いので、 必ず、はぐれないように御願

いします。」などと、 言う出来事があったのですが、 まあーー、手をあげた人は、

変な滑稽な顔をされていましたが、 全員で 1つの事をしたり、 ある場所に行った

り、又、帰たりする場合は、 それぞれが心がけるしかないわけです。



イメージ 3



  例えば、 海軍航空隊で、 編隊から外れると言うのは、 1人乗りの戦闘機

などでは、死を意味したのです。

 海上で、陸地などの目標物の無い、海の上を飛行すると、 どこを飛行している

 のかわからなくなる、 錯覚に陥るのです。

 そして、燃料が切れたら、墜落するわけです。


イメージ 4


 私は、数年後、 東シナ海で、潜水艦の艦長が蒸発するという事件があって、

当時多くの噂を呼んだのです。

 乗組員に殺されたとか、 自分で自殺したとか、 高波に浚われたとか、そんな

推測話の後、 空母 加賀の飛行隊が上空から捜索する事になったのですが、

私達の飛行機は、私が下手を打って、 どこを飛んでいるかわからなくなって、

海上に着水して、 支那人の漁船に救助されるという事件を起こして、大恥を

かくことになるのですが、2度、計算の方位を間違うと、 とんでもない事になって

いったのです。


イメージ 5



  集団から外れる人間と言うのは、総じて、1人で違う行動を行って、 集団から

外れてしまうわけです。

これが、 発動機のトラブルとか、 機械的な事情の時もあるのですが、勝手な

事を行っていて、 集団から外れて行ってしまうと言う事が多いようです。



イメージ 7



   みんなが、みんな、 全体のことを考え、 「自分が指揮官であったらば。」と

こういう心がけで、航空機を動かし、勝手な行動を慎み、 上官の立場で物事を

考えて行動していく、 こういう心がけで誰のためでもない、自分のために行動

していく事を海軍で教え込まれていったのです。



イメージ 8
 


 戦後の社会で言うと、 1人の従業員が、 会社の社長の立場で物事を考えて

日々行動していく、 こうすることで、無駄もなくなり、トラブルも少なくなり、いちいち

社長がうるさい話を聞かせることなく、 物事がスムーズに動いていくわけです。

ところが、 いくら話が上手で、 面白い話が出来て、頭がよくて、 お金儲けが

うまくて、まっ そういう男がいたとします。

ところが、この男、人の立場を考えず、単独行動が多かったとすると、 しだいに

周囲から孤立していくことになって行くわけです。


イメージ 9





  そんな訳で、 自分のことしか考えてない人、 そういうパイロットがいたとすると

そういう人の操縦する航空機は、いつかはぐれていくわけです。

そして、広い海上で消息を絶っていく、 こう言う末路をたどるわけです。



イメージ 10



  と言うわけで、 当時の鬼塚大尉のお話というのは、「自分勝手な行動をとらず、

部隊指揮官 赤塚 少尉候補生の立場になって、物事を考え、自ら行動し、全体の

統帥を乱さないようにせよ。」と、 こういう意味合いのお話であったのです。



イメージ 11



  この考えは、航空隊だけでなく、 艦艇でも同様で、日本海軍の基本的な

  考えで、私達は口やかましく指導を受けていったのです。


  【 明日に続く。】