第71回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第70話 海軍兵学校 入学試験3日目を受験する。                 2012年4月18日 水曜日投稿
 
翌日の大正9年8月8日の朝、4時30分頃、起床し、台所を見ると女将が1人で、何かをしているようであった。 
 
弁当を頼んだので、早朝から、申し訳ないと思っていたのであるが、朝の残り物を入れてくれればよいと思っ
 
ていたのだが、魚を焼くにおいがする。
 
 6時30分ぐらいから、朝食を食べた。
 
旅館の女将が、「色々と考えたのですが、暑い日々なので、お弁当が傷んだらいけないので、傷みにくい、
 
ウナ重のお弁当にしておきました。」と言って、うな重のお弁当を作ってくれた。
 
「おくさん、ごちそうですねー、すみません気をつかっていただいて。」と会釈して、弁当と水筒を受け取った。
 
ありがたい話しである。
 
ウナギは、ずいぶんと手間がかかるのである。そのままでは焼けないので、まず、奈良県では、おろして、
 
蒸すのである、それから、火をおこして、たれにつけつけ焼いていくので、2時間は十分時間がかかるのである。
 
朝早くから起きて仕事をしていたのは、こういう事だったのか----。
 
お代のことが気になったので、「お金はーいくらでしょうか。」と聞いてみたら、女将が「いいのよー、好きでしたこ
 
とだから、そのかわりに入学試験がんばるんですよ。」と、励ましの言葉をいただいた。
 
あさから、人の情けにふれて、良い気分になり、宿を後にして、38連隊に急いだ、7時40分頃連隊正門に
 
到着した。
 
立番の兵士に、挨拶して、連隊講堂前の受付に急いだ、名前と住所を申告して、写真と照合した後、
 
試験会場に入った。
 
はじめは、150人ほどいた、受験生徒が、3日目には、17人になっていた。
 
8時30分ほどに、海軍士官が、問題用紙を脇に抱えて入ってきた。
 
いよいよ、国語、漢文の試験の開始である。
 
 
【次回に続く。】