第73回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第72話 連隊食堂での話。 2012年4月20日金曜日投稿。
連隊講堂を出て、敷地の中を歩いていると、赤い下地に星が、2つついた、階級章をつけた、若い兵士がいた
ので、連隊食堂の建物は、どう行くのか聞いて、そちらに向かった、38連隊の敷地は広く、案内板もないので、
やっかいだった。
食堂なる建物に入ると、また、若い兵士がいたので、昼食の話しをすると、指をさして、「自分は権限がない
ので、あそこの担当の軍曹に、事情を話すように。」と、言われ、その40才前後の軍曹の所に行って、「あの
ー、海軍兵学校の試験に来た生徒ですが、実はそのー、試験担当の海軍大尉から、昼は連隊の食堂で食べ
るように、指示を受けて来たのですが、どのテーブルを使用したらよろしいでしょうか。」と尋ねると、軍曹は、
自分の腕時計を見ながら、「おまえ、まだ、朝の0950時で、もう昼飯を食べるのか。」と言われてしまった。
「実は、試験が早く終わりすぎてしまいまして。」と頭をかきながら話しをしたところ、「あそこの角のテーブルを
使用するように。」と、話しがあった。
広い食堂で、指示の場所に移動して腰をかけた、まだ朝の10時である。
水筒を出して、水を飲もうとしたら、美味しいお茶が入っていた。
「うまいお茶やのうー、宇治かどこかの良い茶みたいや。」と、一人でつぶやいて、大和屋旅館の女将の顔を、頭
の中で思い浮かべて感謝した。
まだ、お昼には早いのであるが、腹もなぜかすいてきたので、弁当を開いた。うなぎのたれ焼が、上にのって
いたウナギ弁当である。
おいしそうである。モグモグとほおばって食べた、よく蒸してあるため、骨も気にせず食べられて美味しいウナ
ギである、よく見ると、下にもう一重に、ウナギがひいてあって、2重になっていた。
美味しい水筒のお茶を飲みながら、ありがたくいただいた。
少しはなれたところで立って、こちらを見ていた、さきほどの軍曹が近づいてきて、料理の担当のためか、自分
の弁当の内容が気になるらしく、のぞき見して、「おまえー、うまそうだなー、朝の10時から、鰻重とは、兵学校
を受験できる裕福な家の息子は、うらやましい。」と言うので、「実は、連隊の北側の大和屋という旅館の女将
さんにつくっていただいたのです。」というと、「ほうー、あそこの旅館で鰻重を作るのか。」と、雑談した。
「僕の家は、父が学校の国語の先生で、ガキの頃から、漢文、書道、国語をたたき込まれまして、一時は父の
ことを遊びに行けないので、疎ましく思ったときもありましたが、今日の試験は、国語、漢文で、父に教えてい
ただいていたので、人よりも早くできてしまい、ここに早く来てしまいました。」と話すと、軍曹は、「ほうー、学校
の先生の息子か、ま、がんばれ。」と言って、テーブルから離れていった。
役に立った。
おいしい水筒のお茶を飲みながら、満足したのであった。
【次回に続く。】