第80回、昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第79話 挫折。                               2012年4月27日 金曜日投稿。
 
何十分であったか、定かでないが、合格発表の掲示板の前で、座り込んでしまい、頭の中が、白くなってしまっ
 
た。
 
後の方で、男の小さな泣き声が、するので、ふと振り向くと、隣の席の生徒であった。
 
自分とたぶん同じ所が回答できずに、不合格になつたのであろうか、しばらくすると、陸軍の立ち番の兵士が2
 
名、近づいてきて、「そろそろおまえ達、門から外に出ろ。」 「そろそろ門をしめるぞ。」と言う物だから、自分
 
は、手荷物を持って、掲示板をあとにした。
 
となりにいた生徒は、まだ、座っていたのか、後の方から兵士の声で、「何をめそめそしておる。」
 
「きさま、それでも大日本帝国の男子か、女みたいにめそめそするな、海軍がだめなら、機関学校でも、陸軍で
 
も、受験してみろ、今日は早くもう帰れ。」と大きな声で、怒られていたのが記憶にある。
 
帰り道、夏の8月のむしむしした夕方で、どの道をどう通って帰ったか、覚えてはいないが、38連隊の正門を
 
出て、フラフラと旅館に向かって歩いて帰ったのであった。
 
だんだんと夕日が落ちて薄暗くなる帰りの道中、旅館に帰って、どう話そうか、父や母にどう話すか、学校の先
 
生、近所の人にどう話すか、考えたのであるが、気の重い話しであった。
 
【次回に続く。】