第82回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語。】

第81話 失意の帰宅。                             2012年4月29日日曜日投稿
 
奈良の旅館で、朝食を食べて、女将に丁重に挨拶して、玄関で、靴を履いていると、「来年がんばりなさい。」
 
「来年は、たぶん大丈夫ですよ。」と女将が、優しい声をかけてくれた。
 
ぺこりと頭を下げて、旅館をあとにして、自宅に急いだ、昼になると、8月のため、暑くなる、急がなければ、
 
五条の町まで戻って来て、今日の夕食の食材を買って帰ろうと、八百屋などをまわって、手荷物一杯で、家に
 
ついた。
 
母親がどうしているか、心配であったが、近所のおばちゃんに、良くしてもらったらしい。
 
母のシカは、自分が予定より早く帰ってきたので、受験失敗を察したのか、母の方からは、何も言わなかった。
 
近所のおばさんの所に行って、母が世話になったことを、礼を言おうと思って、尋ねたところ、「入学試験
 
どうだったの美津雄君。」と聞かれたので、「いやーー、残念ながら、不合格になりまして、一生懸命がんばった
 
のですが、さえん話しです。心配をおかけしまして、奈良に行っている最中、母がお世話になりまして、ありがとう
 
ございました。」と言うと、「まあー、校長先生の息子さんでもだめだったのーー。海軍兵学校という所は、試験
 
が難しいのねー。」と言われたのであるが、それ以上、話しをせずに、早々に自宅に戻った。
 
伊勢神宮のお守りを忘れていったのが、まずかった。
 
どうにも、こうにも、当分やる気も出ないので、自分の部屋の畳に寝っ転がって、天井の板を眺める時間が
 
続いたのであった。
 
【次回につつく。】