第132回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第131話  大正9年の暮れ                       2012年6月20日 水曜日投稿
 
大正9年は、自分にとって、初めての挫折と、人生の停滞の年であった。
 
そんな大正9年も、12月後半で、もう終わりである。
 
奈良の山奥の寒さも厳しさを増してくる、学校が冬休みに入り、父のやぞうが家にいるようになったので、家事が
 
楽になったのであるが、正月の準備と言っても、何もしていなくて、普段そのままであった。
 
稲刈りを手伝った、山口のおじさんが、お餅を作ったといって、淵田家に持ってきてくれたのであった。
 
ありがたくいただいた。
 
近所の人つきあいも、大切だと思ったのであった。
 
翌年の大正10年は、自分にとっては、正念場の人生を変えた、いや、人生が決まって、人生という船に乗った年
 
で、あった。
 
同級生は、海軍兵学校に入学して、がんばっている。
 
自分は、奈良の山奥で、新聞配りである。
 
こんな事ではいけない、こんなはずではなかった。
 
そんな事をぼんやり考えていると、父のやぞうが、「美津雄、合格祈願のために、春日大社に初詣に行こう。」
 
と言い出したので、父と一緒に、母の食事の支度をして、家を出たのであった。
 
【次回に続く。】