第135回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第134話  絵はがきと新聞配達。                     2012年6月23日投稿です。
 
 
 大正10年の1月の元日、いつも通りの時間の朝3時半に早起きして、大山新聞店に、仕事に行くと、「新年あ
 
けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。」と、おじさんに声をかけると、元気のない返事、
 
「どないしはったんですか。」と、問いかけると、今日の元日に新聞配達に来る人が、ほとんどこないらしい、
 
「今日の朝方、春日大社にお参りに行って、お土産の絵はがきを買ってきました。良かったらお納めください。」
 
と、手渡すと、元気のない顔で、「ありがとうーーー淵田君。」と、言って、肩を落としていた。
 
早速、自分の持ち分を入れ物に入れて、担いで事務所を出た。新聞配達に、休みはない、毎日、毎日大変で
 
ある。
 
今日は、賀正挨拶の広告が入っていて、間に挟むのが、いつもより大変であった。
 
早めに配り終え、大山新聞店に戻ると、奥さんが、事務所に出てきていたので、新年の挨拶をすると、奥さん
 
が、「春日大社のお土産ありがとうね、これね、今日の元旦用に、おばちゃんが作ったの。」と、言って、豆餅を
 
紙にくるんで、渡してくれたのであった。「淵田君、あなただけだわ、休まずにきてくれるのは。」と、言って
 
困った顔をしていたのであった。
 
自分は、「これは、助かります。家に帰って、家族で焼いていただきます。」と、丁重に礼を言って、大山新聞店
 
を後にしたのであった。
 
 
【次回に続く。】