第139回 昭和の伝道師、【戦中、戦後のパイロットの物語。】

第138話 役人への勧め。                        2012年6月27日 水曜日投稿。
 
大正10年の正月の3日、正月休みも後わずか、家族でくつろいでいたときに、源田家は、家族で坊主めくり
 
をしようという事になった。
 
 
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坊主めくりとは、戦前のオモチャというか、トランプのような物で、カードに百人一首が、書いてあって、
 
 
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     かかりが、手で、中をぐじゃぐゃにめくって、裏がえしにして、みんなでカードをめくって行くわけで、
 
 
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  はじめは、兄の松三で、引くと、太夫様のカードだったので、そのまま手元に置いて、次は、實【みのる】の
 
番で、ひくと、これも太夫さんのカードが、出てきたので、手元に置いて、次は、弟の幸夫の番である、引くと、
 
つるつる頭の坊主のカードが出てきたら、表にして、中央に、手元に何枚カードがあろうが、全部、出さないと
 
いけないのである。
 
幸夫のやつ、「ありゃーー、坊さんジャー。」と、声を出して、全部手元のカードを中央に出す。
 
トランプで言えば、ジョーカーの様な物で、みんな「はっはっはーーー、幸夫、正月早々、ついとらんのーー。」
 
と大笑いになるのである。
 
次は、父の春七の番で、引くと、御姫様のカードが出てきた、姫のカードが出てくると、坊主のカードをひいて、
 
中央に出しているカードを全部もらえるのである。
 
「ゆまんのうーー、幸夫、父ちゃんが全部もろうとくわーーー。」と、こうなっていって、ずいぶんと枚数があるの
 
で、つづけて行くのである。
 
最終的に、手元に残っているカードが、多い人が、勝ちになるのである。
 
このカードは、百人一首が、書いてあって、歌の読み主の、姫とか、太夫とか、坊主の絵が描いてあるので、
 
和歌の勉強を楽しく出来る様になっている。
 
そんな遊びをみんなで楽しみながら、源田家の正月は楽しく過ぎていく、妹と、母親たちは、坊主めくりが、
 
すんだ後、サイコロを使って、双六をして遊びだした。
 
 
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当時の人生ゲームのような物で、上がりになると、内閣総理大臣になれるのであるが、所々に、はじめに戻る
 
という場所があって、なかなか、上がりにならないのであった。
 
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兄の松三が、【後の大蔵官僚より政治家に転身】が、「實、海軍はやめとけ、死んだらどうする、中央の役人
 
がやはり良いぞ、何事も東京で決定されていく、戦艦を建造するにしても、道路を造るにしても、何にしてもだ、
 
予算を握る物が、この国を動かしていく、大蔵省こそ、出世の表通りだ、軍人なんぞ、海の上で過ごしても、
 
つまらんぞ。」と、言うので、實は、こう切り返した。「帝大を出て、大蔵官僚や、外務官僚になっても、銅像
 
建たん、僕は歴史に名を残す人物になるんだ、中央官庁の一役人では、役不足だ。この国は、いずれ、軍人
 
でないと、総理大臣なれない、物事は、軍人が決めていく、そういう時代に今後なっていく。」と、いうと、兄の
 
松三が、「そうかのーー。」と、言っていたが、大正後半から、昭和前期にかけては、實の言うような、時代に
 
なっていくのであった。
 
「そのうち、源田 實 元帥とか、言うて、おまえを崇拝する日が、くるのかのーー、お日様が、西から上がって、
 
東に沈むようなもんじゃのうーー。」と、言って笑っていた、兄であった。
 
三男の幸夫【後の通産官僚】は、「僕は、大金持ちになって、この近くの田んぼを買い占めて、地主になって、
 
暮らすんじゃ。」と言うので、父の春七が、「幸夫、そりゃーええ考えじゃ、よそに行かず、加計におって、
 
父ちゃんたちと、一緒に暮らそう。」と、そんな会話があったのであった。
 
【次回に続く。】