第142回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第141話  奈良の身上調査                        2012年6月30日土曜日の投稿です。
 
場所は、変わって、もう一人の主人公の、奈良県の淵田家の周辺も、年が変わって、大正10年の寒い2月
 
に入って、色々と調べられていると、風聞を聞いたのであった。
 
奈良の山奥も、雪が降って、道路際には、雪が残っている。
 
朝の新聞配達も、9月から始めて、半年目に入ったのであるが、そろそろ、受験勉強の追い込みなので、2月
 
一杯で、やめた方が良いかと考えていたところであった。
 
朝の新聞配達で、白い息を吐きながら、新聞を配って、大山新聞店に帰ってみると、奥さんが、「昨日のお昼
 
過ぎにね、奈良の連隊の憲兵隊という人たちが3人来て、淵田君のことを色々と聞いてかえったわ。」と、言う
 
ので、「そろそろ海軍兵学校の入学試験が、迫っているので、身辺調査が行われているのだと思います、昨年
 
もそうでしたので。」と、返事をしたのであった。
 
「それから、新聞配達を、受験の関係で、2月末までさせていただいて、3月からは、試験の準備をしたいので、
 
代わりの人の手配をよろしくお願いします。」と、奥さんに伝えると、「そうね、そろそろ受験の日が近いから、
 
そうしないといけないわね、主人と相談しておくわ。」と、奥さんは、残念そうな顔をしていたのであるが、ずっと
 
新聞発達をするわけにいかないので、丁重にやめる話をして、薄暗く寒い奈良の道を、自宅に戻ったので
 
あった。
 
  【次回に続く】