第165回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語。】

 第164話  校庭激走                            2012年 7月23日 月曜日投稿です。
 
 朝礼台の前で、聞こえるような音で、おならをわざとした清水君を見て、校庭の生徒は、クスクスと笑ったので
 
あった。
 
 涼しい顔をして、機転を利かして、他人に迷惑が及ばないように上手に、短気な陸軍中尉を煙に巻いたやり方に、
 
さすがは、商売人の息子、 顔色1つかえずに、千両役者ぶりである。
 
 清水君が列に戻ると、朝礼台の陸軍中尉が、「諸君、おはよう、今日の訓練を指揮する、我輩は、陸軍中尉の
 
青木である。 えーー本日は、朝から訓練に水を差す、不心得な生徒がおるようであるが、戦地での負傷者への、  
処置など、本日の訓練項目であるが、戦地では、1にも2にも、足腰が勝負である、今日は体のほぐしも兼ねて、
 
ここの校庭を使用して、駆け足訓練を行う、それでは全員、右向け-、右、 全員腰に手を当てて、 駆け足訓練
 
始めー。」と、かけ声をかけると、口に笛をくわえて、「ピッピー  ビッビー、ピッピー ピッピー。」と、笛を吹いて、
 
リズムをとりながら、少し離れて、「きさま、遅れとるぞ。」と、遅い生徒を怒鳴って、怒り飛ばすのであった。
 
 
 
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 校庭を5周ほどしたかと思うと、みんな、くたくたの様で、特に先生方は、バテていた。
 
自分は、新聞配達で鍛えていたので、 まだ余裕があったのであるが、そうでない人は、大変である。
 
 青木中尉が、笛を「ピーイーーー。」と、鳴らして、「全員、整列。」と言うと、みんな足をぐらつかせながら、
 
朝礼台の前に集合したのであった。
 
 「全員、傾注、みんな、このくらいのことで、へばってどうする、戦地では、朝から晩まで、走り詰めだぞ、しっかり
 
しろ、良いか、今度は、応用訓練を行う、 我が輩が、ピーーーー、と笛を吹いたら、地面に伏せる。 そして、もう
 
一度吹いたら、起き上がって、走る。 この反復訓練を行う。」 「全員、きょうつけー、右向けー右、 全員かけあし
 
訓練始めー。」と、号令すると、みんな仕方なく、駆け足を始めたのであった。
 
  「ぴーぃーーー。」と、笛の音がしたら、 うつぶせに地面に伏せて、横になって、 「ピーイーーー。」と、また
 
鳴ったら、起き上がって走るのであった。
 
  大正10年の3月2日の訓練は、身体にずっしりとこたえたのであった。
 
【次回に続く】