第191回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第190話 広島第1中学におもむく。 2012年8月19日 日曜日の投稿です。
翌々日の、電報の指定の日に、源田實は、下宿を後にして、広島県立第1中学校に歩いて向かった。
当時は、現在の図書館の所が、旧県立病院で、南側に、与楽園の庭園、東側に武徳殿があり、
そこから、東に比治山方面に進むと、万代【まんよ】橋というのが、元安川にかかっていて、さらに
東に行くと、現在の広島市役所が見えてくる。
ここを曲がって北に行くと、現在の国泰寺高校の付近に、広島県立第1中学校は、当時木造校舎が、
建っていたのです。
校舎入り口の、靴脱ぎ場の土間で、靴を脱いで、職員室に行って聞くと、3年1組の教室に行くよう指示
され、その部屋で待つことにしたのです。
他の生徒もどんどんとやってきて、20名ほどになっていたでしょうか。
しばらくして、進路担当の松浦先生が、短剣を帯びた海軍士官と一緒に教室に入ってきたのです。
海軍士官は、教卓の右側に、不動の姿勢で立ち、 松浦先生のお話が始まったのです。
「みんな、おはよう、海軍兵学校の受験勉強が一番大切なときに、卒業した学校に集まってもらって
、足労をかけた。
合格者数を競い合っている、世間の関心も、修道中学と第1中学と、どちらが合格者数が多いか、
関心事項である。
今日は、諸君の為に、本校卒業生の先輩で、海軍兵学校の在学中の平本道隆君が、ありがたいこと
平本先輩から、よく教えていただくように。」と、お話があったのであったのです。
紺色の制服に、短剣姿の、平本氏は、背筋をピィーーンと伸ばして、ぴっしっとしていて、一発で、教室内
のみんなを虜にしてしまったのです。
松浦先生は、窓際に移動して「平本君、よろしく頼む。」と言うと、平本生徒が、教卓で、「自分は、
教室の生徒たちは、あっけらかんとして、聞いていたのだが、又々自分に、平本生徒が、「おい、
そこの貴様、自分の挨拶をしてみろ。」と、命令されたのです。
自分は、立ち上がって、「広島県立第1中学校卒 源田實です。」と言うと、平本生徒が、ずかずか
と机に近づいてきて、「声が小さくて、聞こえん。」と、怒鳴るので、大声で、「広島県立第1中学卒、
源田實です。」と再度、叫ぶと、「まだ、聞こえん。」と言う、 この生徒、ぼんくらきゃーの、と思って
いたら、「いいか、貴様は、心がけが良くない、まず姿勢が悪い、海軍に入ると、波の音、砲声の音、
風の音で、声が聞き取りにくい、腹の底から声を出す訓練が必要である。
そして、軍隊では、源田實です、ではなく、源田實でありますと答えるように、いいか、脚のかがとを
つけて、つま先をハの字に開け、背筋を伸ばし、ケツの穴を閉めろ、肩をもっと広げろ、腹に力を入れて、
腹の底から声を出せ、いいか、もう一度。」と言われたので、「はぃ。」と大きく返事をして、「広島県立
第1中学校卒業 源田實であります。」と、言うと、平本生徒が、「また゜まだよくきこえん、全員、
起立して、源田生徒のように、各自、挨拶してみろ。」「よーーい、はじめーーー。」と大声で怒鳴ると、
みんな、大声で、教室は大声の挨拶の部屋となったのでありました。
【次回に続く。】