第192回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第191話 起立と着席の事 2012年8月20日 月曜日の投稿です。
我々生徒は、教室の中で、大声を出して、挨拶の練習をしていたのであるが、平本中尉は、大きな声で「全員やめー
ーーーー。」と号令すると、今度は、「全員着席。」と大声で言うので、みんなイスに座ったのであった。
すると平本中尉は、「なんだーーその座り方は。」と怒鳴り散らし、「全員、もう一度起立。」と
大声で叫び、みんな仕方なしに起立したのであった。
平本中尉は、教室の床を革靴で、コトン、コトンと音をたてながら、後の誰も座っていない、イスをつかんで、後の
壁の前に行った、「全員、まわれーー後。」と、大きな声で言うので、みんな後を向いたのであった。
「良いかーー、おまえたちは、起立、着席の基本がなっとらん、このまま試験を受けに行くと、広島県立第1中学の
恥さらしである。今日は、俺が見本をしめすので、みんなよく見ておくように。」と、言うと、又々大きな地響きのする
ような声で、「着席。」と叫ぶと、1、2、3の順序で、見事な座り姿、今度は、又々地響きするような大声で、「起立。」
と言うと、1、2、3の順序で、見事な立てり姿であった。
平本中尉が、「源田生徒、やってみろ。」と言うので、背筋を伸ばして、「はい。」と大声で返事をして、起立と、着席を
してみると、「だめだだめだ。」と言われ、「1、2、3の感じで、着席、1、2、3の順序で、起立する。」 「良しきさまらも
俺が号令するので、全員やってみろ。」 「いいかーー、起立 1、2、3。」 「着席 1、2、3。」と、数回繰り返した。
今度は、平本中尉が、「ここの教室の中で、今日教えた、自己紹介、起立、着席が、どのような意味をもつか、
わかるものは、手を上げろ。」と、言われたので、自分は手を上げたのであった。
平本中尉は、ほうーーと言うような顔つきで、「良し、源田生徒、答えてみろ。」と言われ、背筋を伸ばして、大声で
解答した。
「きびきびとした動作で、他校の生徒との違いを出し、さすがは、広島第1中学と言われるようにするためであ
ります。」と言うと、「良し。」 「そういう意味合いもあるが、全員良く聞け、学科試験の後には、面接試験が行わ
れる、イスの座り方、立ち方、挨拶の仕方、声の出し方で、さすがは、広島県立第1中学と、呼ばれるように、
しておかないといかん。」「今日は、貴様らをしごきに修正しに来たのではない、少しでも役に立てばと考えての
ことだ、悪く思うな、それでは、起立、そしておのおのの挨拶、そして着席までを練習する。」と言うと、机と机の間を
ゆっくりと歩きながら、大声で、「起立。」と平本中尉が叫ぶと、みんな1、2、3のタイミングで、起立して、「自分は、
広島県立第1中学校卒業、 源田實生徒であります。」と言うと、今度は、平本中尉が、「着席。」と大声で叫ぶと、
みんな、1、2、3のタイミングで、着席したのであった。
【次回に続く。】