第193回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第192話  海軍兵学校受験概要の事                   2012年8月21日火曜日の投稿です。
 
 平本中尉は、黒板の前に移動すると、チョークを持って、なにやら書き始めた、
 
5月6日 午前中 数学1 
 
5月7日 午前中 数学2  午後 英語
 
5月8日 午前中 物理、化学  午後 国語、漢文
 
5月9日 午前中 日本史  午後 作文
 
5月10日 午前中 口頭試験 午後 身体検査及び、被服採寸
 
  と、書くと、我々の方を振り返り、じろりと一望した後、 「おい、貴様、この黒板を読んで見ろ。」と、井上生徒に、
 
命じた。
 
 井上生徒は、教えていただいたように、1、2、3の感覚で、机から起立して、大声で、黒板を読み出した。
 
 
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 すると、平本中尉は「何を言っておるか、聞こえん、もう一度。」と、大声で叫び、井上生徒は、又はじめから大声で、
 
叫びながら、試験の日程を朗読したのであった。
 
平本中尉は、「よし、着席。」と言うと、井上生徒は、又、1、2、3の順番で、机に着席した。
 
「良いか、これが今年の入学試験の日程だ、よく頭に各自たたきこんでおけ。」 「問題はたくさんでない、各試験科
 
目につき、5問出るだけだ、 1問でも間違えたら、不合格で、次の試験は受けられん。
 
それぞれ、日頃、勉強しているだろうから、全力であたれ。」 「全員よいかーー。」と大声で問われたので、
 
全員「はぃーー。」と、大声で叫んだのであった。
 
 平本中尉が、革靴の音を、コトン、コトンと、させながら、ゆっくりと机と机の間を歩きながら、大きな声で、「きさまら
 
通常は、海軍兵学校の入学試験というのは8月に行われる、ところが今年はどうだ、5月だ、3ヶ月も早い、これが
 
何を意味しているかわかるものはおるか。」と、聞いたのであるが、みんなしーんとして返事がない、コトン コトンと
 
机の間を歩いて元の教卓に戻ると、平本中尉が、「昨年に比べて、受験者が大幅に多いので、業務が間に合わ
 
ないので、期日を例年より前倒ししたのだ、と言うことは、競争率が高く、合格するのは大変と言うことだ、わかった
 
か。」と、大声で言うので、全員「はい。」と大きな声で返事をしたのであった。
 
【次回に続く。】