第195回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第194話 口頭試験の予行 2012年 8月23日木曜日投稿です。
平本中尉は、重森生徒に、45度の礼の仕方を指導したのであるが、我々は、起立したまま、注意深く見ま
もっていた。
平本中尉は、窓際の席に戻ると、「もう一度。」と、重森生徒に、指示をしたのであった。
重森生徒は、一度、教室の外に出て、再度、コンコンと戸をたたいて、「入ります。」と言って、教室に入り、45
度の礼をした後、「広島県立第1中学校卒業 重森靖彦であります。」と、怒鳴り声に近い声で、挨拶した。
平本中尉は、「よし、着席。」と、言うと、重森生徒は、1、2、3、の動作で着席した。
「うーーん、貴様ずいぶんと良くなったぞ。」と言って、平本中尉は、満足げに話すと、重森生徒も、ニコニコしていた。
平本中尉が、「それでは、口頭試験を始める。 大日本帝國海軍が、模範としている國の海軍を解答せよ。」と、
精神的主義を述べよ。」と、質問に及ぶと、重森生徒は、返答が出来ず、黙り込んでしまった。
平本中尉は、「だめだ、不合格、貴様は退席せよ。」と言い放ったのであった。
重森生徒は、又、1、2、3の順番で、起立すると、入り口で、まわれ後して、礼をして、教室を出た。
中尉は、「だめだ、誰か交代しろ、よし、そこの貴様だ。」と指名すると、今度は、後藤生徒が、同様に、挨拶して、
規則正しく席に着席した。
平本中尉は、「うむ、なかなか、動作は良いぞ。」と上機嫌であった。
述べよ。」と言う問いに対して、後藤生徒は、返事に窮してしまい。しばらくすると、「だめだ、不合格、退席せよ。」と
言われ、後藤生徒は、退席した。
平本中尉は、「よし、次は、そこの背の低い生徒、貴様だ。」と、源田實を指名したのであった。
大きな声で、「はい。」と返事をして、教室の前の入り口から出て、後の入り口にまわったのであった。
トントンと、教室の戸をたたいて、戸を開けて、きょうつけのまま,「はいります。」と大声で叫び、一歩入り、まわ
れ後をして、戸を閉めた。 そして、まわれ後をして、金たまに力を入れ、背筋を伸ばすと、45度の礼をしたので
あった。
「広島県立第1中学校卒業 源田實であります。」と挨拶すると、中尉から、「良し、着席。」と、声がかかると、
着席した。
「みんな、よく見ておけ、源田生徒、貴様、なかなか良いぞ。」と、ほめていただいた。
平本中尉が、「よし、口頭試験を始める。 大日本帝国が、世界に進出していく場合、どのような策を立てるのが
よいか。」と、聞いたのであった。
つくって、占領し、さらに進出していく作戦を提案いたします。」 これを聞いていた平本中尉は、ほうーー面白い
やつという、顔つきで、「では、その理由を簡潔に述べよ。」と、次の質問をしたのであった。
「第1の要因は、大日本帝国には、鉄、スズ、石油、ゴムなどの資源が無く、全部輸入に頼っております。
これらの資源を獲得していかなくては、今後の発展は望めないと考えます。」
平本中尉が、「どうしてそんな鉱物資源が、必要か。」と問いただすと、「軍艦も、タンクも、鉄道も、鉱物資源、
と油がないと、動きません。」と解答したのであった。
平本中尉は、「良し、合格、 次の生徒は、おい、貴様だ、源田生徒は退席してよし。」と言われ、規定通りの動作
で、退席したのであった。
【次回に続く。】