第240回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第239話  大正10年5月7日、夜の出来事。             2012年10月7日日曜日の投稿です。
 
 
  合格発表の紙が貼り出された、広島城の大手門では、喜んでいる者、ガックリ来て、家に帰って行く者、
 
それぞれであったが、10分後、 人が少なくなった、掲示板のところで、自分の受験番号の前で、たてって、眺めて
 
いた。
 
  すると、井上が、「源、 どうじゃった。」と、聞くので、「見ての通りだ、」と、言うと、井上が「1中の生徒は、
 
とりあえず、みんな合格したらしい。」と、言っていた。
 
  「さっ、明日は、午前中、物理と化学、 午後から、国語、漢文の試験があるぞ、 数学、英語のことは、
 
忘れて、早う家に帰っての、明日の準備せにゃーいけん。」と、言って、二人で、広島城をあとにしたのであった。
 
 
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           途中で、井上と別れて、下宿に急いだ、朝からこのーずっと、緊張していたので、
 
           眠くなってきたのであるが、辛抱して、広島の町中を歩いたのであった。
 
 
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             夕方、遅く、「おばちゃん、ただいまー。」と、声を出して、玄関に入ると、「實君、お帰り、
 
         大変じゃったねー。」と、迎に出てきてくれた。
 
         「おばちゃん、今日の試験は、二つとも、合格じゃた。」と、言うと、「えかったねえー、明日も、
 
         がんばらにゃーいけんよ、あと3日、まだ、半分もすんどらんけえね。」と、会話して、「お弁当、
 
         ありがとう、ぶちうまかったわー。」と、言うと、おばちゃん、「明日も弁当がいるねー。」と会話を
 
         して、2階の自分の部屋に、上がったのであった。
 
         しばらくして、「みのる君、ご飯よ。」と、おばちゃんの声がしたので、どたどたと、階段をおりてみる
 
         と美味しそうな、刺身かならんでいたのであった。
 
 
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            「これ、なにーー。」と、聞いてみると、「そりゃーねー、宇品の港に上がった、たこよねー。
 
 
        タコの刺身は、薄切りにして、もみじおろしとネギで、おばちゃんらは食べるんよ、おいしいけえ、
 
        みのる君も、食べてみーー。」と言われたのであった。
 
 
        加計の山育ちの實には、たこの薄造りなどは、なかなか、食べる機会がなかったのであった。 
       
        はしで、つついて、食べて見ると、たこの吸盤の部分が、コリコリして、美味しかったのであった。
 
        「おばちゃん、美味しいねー。」と、いうと、「ほんまねえー、おばちゃん遠くまで買いに行って、
 
        きて、よかったわー。」と、楽しく夕食の会話をしたのであった。
 
 
【次回に続く。】