第247回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第246話 奈良歩兵第38連隊でのお昼ご飯の事 2012年10月14日日曜日の投稿です。
炊事係の軍曹が、「おまえ、昨年から何していたんだ。」と聞かれたので、「はい、新聞配達などをいたしまし
て、母が、体調が優れぬ物ですから、看病をしながら、勉強に励んでおりました。」と、答えると、「ほうーー、感心な
ことや。」といって、ニコニコしていた。
「実は、今日は、どこでお昼を取ったらよいかと、お伺いをしたかったのですが。」と、聞いてみると、軍曹は、
「ほうやのー、どこがよいかのー、去年と同じ、あの辺はどうや。」と、言われたので、「はい。あそこで取らせてい
ただきます。」と、返事をして、昨年の8月に座っていただいた、机のところで、女将さんが作ってくれた、弁当の風呂
敷を開けたのであった。
弁当の蓋を取ると、「ほおーー、ウナギの弁当やがな。」と、思わず喜んでしまった。
これは、うまそうや、 水筒から、お茶を、机の上に重ねてあった、アルマイト製の器に
ついで、茶をいただきながら、食べたのであった。
すると、炊事係の軍曹が、昨年同様、気になったのか、のぞきに来て、「ほうーー、今年も、
ごちそうの弁当やなー。」と、言うので、「昨年と同じ大和屋の宿に泊まっているので、
女将さんに作っていただきました。」と、モグモグしながら、答えたのであった。
実は、内心、数学の2の試験が、どうなったのか、気になって仕方がなかったのであるが、
このウナギの弁当をいただいているときは、それを忘れて、ゆっくりといただけたのであった。
弁当箱をしまい込んで、風呂敷で包むと、炊事場で忙しそうに仕事をしている、軍曹に、
会釈をして、建物から出たのであった。
そろそろ数学の2の合否の発表の掲示板の所に行かないといけない時間であった。
【次回に続く。】