第254回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第253話 大正10年5月7日の夜の出来事 2012年10月21日 日曜日の投稿です。
そのまま、38連隊の掲示板を見て、明日の予定表を見たのであった。
明日は、化学、物理、 午後から国語漢文である。 いよいよ、3日目の試験で、まだあと3日間試験が続くの
である。
連隊の通用門を、立ち番兵士に挨拶して、奈良の市街地方向に歩いたのであった。
いゃーーよかった、よかった、昨年同様、 不合格だったらと思って、実際、胃が痛いほど、
心配していたのであった。
特に、午前中、物差しがなかったのは、まずかった、運が良かったのであったのだろう。
夕方の、奈良市内を、一人、ニコニコしながら、気分良く、宿屋に、
向かって、歩いて帰った。
現在なら、タクシーで、帰るところであるが、歩いて帰ると、現在では見えない、
いろんな光景が、見えてくる。
宿屋に帰ると、女将さんが心配して、出てきてくれた。
「女将さん、心配していた、英語の試験、合格しました。 明日も、化学と物理、
昼から、国語と漢文の試験があるので、よろしくお願いします。」
というと、 「まあーー、良かったわ、 仏壇に、向かって、手を合わせていたのが、きいた
みたい。」 と、自分の事のように、喜んでくれたのであった。
お弁当箱と、水筒を返して、 美味しかったと丁重に、礼をいってから、
2階にあがったのであった。
宿屋の部屋に戻ると、早速明日の筆記用具の準備である。
現在は、電動の鉛筆削りがあるが、当時は、小刀で、鉛筆をとがらせていたのだ、
これが、結構、時間がかかるのだ、 それと、竹の物差しを忘れないように、包みの中に
入れていると、女将が下から、「 ご飯が出来ましたよ。」と、声をかけてくれたのであった。
急いで、下の広間に、降りていくと、良いにおいがする。
今日は、お団子汁である、 奈良地方のお団子は、かたくり粉を使用して、作るのである。
モチモチして、ねるのも早くできて、小麦粉より作りやすい。
豆腐に、にんじん、ネギなど、野菜を入れて、土鍋で作って、小皿に取っていただくのである。
その日の夜は、心配していた英語の試験が、合格して、ほっとして、差しを忘れて、
鉛筆を定規代わりにして、作図した、苦労話などを、他のお客と語り合いながら、楽しい食事をした
と記憶している。
【次回に続く、】