第274回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第273話 化学、物理の入学試験の事。 2012年11月10日土曜日の投稿です。
兵員食堂で、お弁当をいただき、お茶を飲んで一服すると、合否の事が、気になって、いたのであるが、
気分を変えて、百人一首の歌を、はじめから、目を通した、
お経を読むように、小さな声で、1つ1つ、読んだのであった。
お茶を、もう1杯継いで、 さらに、もう1杯、昨年の試験では、和歌が出て、たしか、秋の田の、かりほのいほ
のとまをあらみ、我が衣手は、つゆにぬれつつ。と言う和歌の、虫食い問題であった。
子供の頃から、父のやぞうが、国語の先生で、事に、漢語の専門家であったので、小さい時から、仕込まれた
のであった。
はじめの頃は、何が何やら、わからず、父を疎ましく想っていたのであるが、ここに至っては、感謝のいたり
であった。
何しろ、畝傍中学では、いつも、国語、漢文は、100点に近い出来で、 いつも甲であった。
そのような事で、国語、漢文には自信が、人一倍あったのであったが、油断は禁物である。
百人一首を目を通し終えて、気がつくと、周囲は、生徒が誰もいなくなり、正午過ぎから、陸軍の兵士が、
どんどんと、食堂に入ってきた。
手早く、水筒などを、風呂敷に包んで、外に出たのであった。
連隊の正門近くの掲示板の前で、待っていると、予定より早く、合否の張り出しがあったのであった。
一番最後に、自分の1020番を見つけたときは、ほっとしたのであったが、なんと、半分近くが、落後して、
合格者は、14人の受験番号しか無かったのであった。
午後の試験で、こんどは、何人になるのか、不安であったのであつた。
【次回に続く。】