第344回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第343話 海軍兵学校 口頭面接入学試験の事。 2013年1月20日日曜日の投稿です。
部屋に入ってきた、海軍大尉は、 我々の前に立って、「起立。」と、号令をかけた、 我々3人は、
不動の姿勢で、起立し、海軍将校の方を見つめたのであった。
「 ただいまより、大正10年度 第52期 海軍兵学校、口頭面接試験を執り行う、全員、礼。」と、
号令をかけると、我々3人は、ぺこりと礼をしたのであった。
そして、「宮城のおわす方向に、礼。」と、叫ぶと、さらに一礼をして、「父母のおわす方向に礼。」と、
号令がせあると、大阪の方向に向かって、礼をしたのであった。
海軍将校は、我々3人の顔を、じっと見ると、「 自分は、海軍省の賀来である。 本日の試験を担当する。
たくさんの受験生の中から、3人選ばれたので、それだけでも、大変であったと思うが、本日は、5日連続の
試験の最終日である。 本日1日、各自、悔いのないように、全力で臨むように。」
「面接は、ここの建物の廊下のつきあたりの一室で行う、 呼出があるまで、ここで待機していて
もらいたい。」と、告げると、海軍将校は、部屋から、出ていったのであった。
しばらくすると、3人の内、 一人の生徒が呼ばれていき、自分は、1番最後に、呼ばれたのであった。
おそらくは、浪人生の為、 受験番号が、一番最後だったので、そうなったのであろうと、考えていたら、
玉井上等兵が部屋に入ってきて、「こちらです。」と、案内されるにしたがって、廊下を歩いて
行ったのであった。
廊下の窓側に、木の椅子が置いてあり、そこに着席して、待つように指示を受けたのであった。
木の粗末な椅子に座ると、正面に、白い紙に、黒い墨で書かれた、文章が貼ってあったのであった。
思わず、何もすることがないので、その紙を見ていると、はて、 おかしな漢字が書いてある。
注意してという、一文が、中意して、と誤字があり、本日の予定右の如しという、一文が、本火の予定、と、
誤字があったのであった。
父親が、国語の教師で、年少の頃より、漢字、古典などは、たたき込まれていたので、誤字には
敏感なのであったが、だれがこんな文章を書いて、貼ったのかと、考えていると、目の前の引き戸が
あいて。中に入れと、言われたのであった。
部屋に入る前に、「受験番号、1020番 淵田美津雄 入ります。」と、大きな声で、挨拶して、入室したので
あった。
部屋に入ると、木椅子がおいてあり、 その向こうに、机と椅子、 その向こうは、ガラスの窓であった。
机の上には、なぜか、灰皿、灰皿の中に、たばこの吸い殻が2本、硯、書類箱がおいてあり、 面接する
のに灰皿があるとは、ーー、
この海軍大尉は、たばこ好きなのかと、一瞬考えたのであった。
海軍大尉が、「着席せよ。」と、指示を出したので、私は、木の椅子に着席したのであった。
「まず始めに、質問を行う、 貴様が先ほど座っていた前の壁に、貼り紙がしてあったであろう、見たか。」
と、質問を受けたのであった。
「はい、みました。」と、返事をすると、「では、尋ねるが、漢字の誤字は、何カ所あったか、こたえてみろ。」
と、質問を受けたのであった。
海軍口頭面接試験の始まりは、こんな感じの質問から始まったのであった。
【次回に続く。】