第353回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第352話 大正10年5月10日 の昼の出来事 2013年1月29日 火曜日の投稿です。
試験会場の待合の建物の中の部屋で、解散になった、我々3人は、建物を出て、軽く挨拶して、
別れたのであった。
どうも年下の人間と、対等に話しをするのは、私のプライドが、当時は、許さなかったのであった。
こちらから、年下の学年の生徒に、軽く挨拶程度に、「じゃーな。」と、こんな感じであったか、そんなに
話しもせずに、別れて、そのまま、風呂敷包みを持って、兵員食堂に歩いて行ったのであった。
私がちょうど、訪れた時刻は、11時、40分程度、 12時を過ぎると、兵士が、どっと、
食事に押し寄せてくる。
例の、給仕係の陸軍軍曹の所に行くと、 とても忙しそうに、いろんな部下に、指示を出して、
戦争のような状態であった。
声もかけるのも、悪いようであったので、 目を合わせて、 軽く頭を下げて、いつもの
食事の机のところに移動して、弁当を食べることにしたのであった。
早くしないと、12時を過ぎると、兵士が、たくさん入ってきて、混雑するので、風呂敷を
開けて、宿屋の女将さんが作ってくれた、弁当を広げたのであった。
今日は、混ぜご飯に、レンコンのお弁当であった。
食事の机の上に置いてあった、星のマークの入った、白い湯飲みに、水筒から、
お茶をついで、 飲みながらいただいていると、 向こうから、軍曹が、歩いてきて、
「 おい、 校長先生のぼん さん、どないやった。」と、聞かれたので、「はっ、まだ、
2次試験が残っておりますが、1次試験は、何とか合格いたしました。」と、席を立って、
ぺこりと、頭を下げると、「 ほうーー、えかったーーー、そうかそうか、この奈良県から、
海軍将校が、出るのは、よいこっちゃ。」と、喜んでくれたのであった。
「昨年、ざんねんやったが、今年こそはと、わしも期待しとったんや。」と、祝福して
くれて、1番始めに、私の合格を喜んでくれたのは、奈良歩兵第38連隊の陸軍軍曹で
あったのである。
【次回に続く。】