第354回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語。】

第 353回  大正10年5月10日 午後の出来事。     2013年1月30日 水曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
  私は、丁重に挨拶して、兵員食堂を後にすると、入れ替わりに、腹を空かした兵士達が、兵員食堂に、
 
行儀良く、隊列を組んで、歩いて行く隊列と前後して、連隊正門に向かって、歩いて行ったのであった。
 
途中、掲示板を見ると、  大正10年度、第52期、海軍兵学校、一次入学試験合格者という、張り紙がし
 
てあり、  私の名前が、  淵田美津雄 と、貼り出してあった。
 
 これを見て、なんというか、そのーー、 体の中から、喜びが、わいて来て、そのーーー、どう言って、
 
表現して良いか、わからないのであるが、満足したのであった。
 
すると、後から、「奈良の新聞社のものですが、 合格者の方ですか。」と、問われたので、「はい。」と、
 
返事をすると。新聞記者の人のようで、色々と聞かれて、そこで、30分ほど、つぶれてしまい。
 
その場を、丁重に挨拶して、遠ざかり、 正門まで来て、立ち番の兵士に、姓名を申告して、
 
 「 よし、 外出してよし。」と、許可を得て、門の外に出ようとすると。
 
 
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      横から、星を2つ着けた、一等兵殿が、「合格、おめでとうございました。」と、言って、
 
    右手で、持っていた30年式歩兵銃を、中央に持ち上げて、捧げつつをしてくれたので、
 
   私は、見よう見まねで覚えていた、敬礼を、一等兵のほうに向かって、両足のかがとをそろえ、
 
   背筋をのばして、右手を、学生帽のつばに着けて、敬礼したのであった。
 
    後から考えると、このときの敬礼が、心を込めて、敬礼した最初の敬礼であったと思う。
 
   そのまま、1度、宿屋に戻って、女将さんに、報告しようと思い、奈良の町中を、ニコニコしながら、
 
   歩いたのであった。
 
 
 
【次回に続く。】