第355回 昭和の伝道師【戦中。戦後のパイロットの物語】
第354話 大正10年5月10日の午後の出来事。 2013年1月31日 木曜日の投稿です。
私は、合格したことを報告しようと、宿屋の大和屋に戻り、のれんをくぐると、誰もいなかったので
あった。
はてーーー、どないしたんかいのーーー。
よく考えると、宿屋の朝の仕事は早い、客の朝食、 片付け、見送りがすんだら、
部屋の片付け、なんだかんだとしていると、あっという間に、昼になってしまう、
そして、すぐに、昼食の準備、片付け、14時から、16時の間は、宿屋の仕事をしてい
ると、唯一の休憩時間で、それが終われば、夕食の準備が待っている。
たぶん、女将さん達、 休憩で、昼寝でもしているのであろう、おこしたら、良くないと、
考え、そのまま、靴を脱いで、自分の部屋のある2階にあがったのであった。
自分が宿泊している、部屋に入り、荷物を降ろして、畳に、大の字に横になり、
天井を見上げて、やっと終わったと、考えていると、うとうととしてしまい、
スヤスヤと寝込んでしまったのであった。
目が冷めると、薄暗くなっていて、もう夕方が、とっぷり暮れていたのであった。
こりゃーー、寝坊してもうたわーー、あかんはーー、と、起き上がり、昼のお弁当箱
などを風呂敷から出して、持って台所の板場に、持っておりようとしたら、はて、
弁当箱がなかったのであった。
私は、夢でも見ているのかと、ほっぺをつまんでみたのであるが、そうでもないようで、
もしかしたら、私が寝込んでいる間に、女将さんが、持っておりたのかいなーと、
考えて、下に、降りてみたのであった。
すると、女将さん、私の靴があるので。2階に行ってみたら、私が寝ていたので、そっと、
弁当箱と、水筒を持って降りたらしい。
「女将さん、無事1次試験は、合格しましたが、まだ2次試験が残っているのですが、
色々とありがとうございます。明日、一旦、葛城に戻ろうと思います。」と、言うと、
「あんまり、気持ちよさそうに寝てらしたので、おこすのが悪いと思って、そのままに
しておいたのよ。」と、 優しそうに、語りかけるので、私は、ゆでだこの様な顔になって
しまい、少し、恥ずかしかったのであった。
「 淵田君、大変だったわねー、去年からの苦労が、なんとか報われて、よかったわ。」と、
声をかけてもらい、とても私は嬉しかったのであった。
「今日は、私のおごりで、ごちそう準備したから、お金のことは気にせずに、お腹いっぱい
食べてちょうだいね、今準備してますから、出来たら呼ぶわ。」と言われて、夕食までは、
2階の部屋で、明日の帰り支度をしていたのであった。
呼ばれて、降りてくると、川魚料理であった。
女将が、「吉野川でとれた、魚を買ってきたの、 色々と考えて、作って見たので、食べて
見てね。」と言われて、その日の夜は、川魚料理に、舌鼓をうったのであった。
普段、当時は、魚などは、なかなか食べれない地方だったので、良い思い出であった。
【次回に続く。】