第380回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第379話、山陽本線を、西へ西への事。 2012年2月25日 月曜日の投稿です。
我々を乗せた、鉄道は、山陽本線を、西に向かって、走り、我々は、薄暗い客車で、揺られて、
過ごしたのであった。
現在と違い、寝台車などはなく、普通の木造の客車で、おまけに、小さなランプが数個、ぶら下げてある、
そんな感じの客車内で、まだ、見える内に、弁当を夕食代わりに、食べて、座ったまま、二人で、雑談し
ながら、鉄道の薄暗い客車の旅を楽しんだのであった。
現在の鉄道と違い、石炭や、水の補給で、よく何回も停車するので、そのたびに、停車
の際の振動で目が冷めて、 おまけに、木の椅子に座りっぱなしのため、お尻が板のよう
になって、大変であった。
そのまま、二人とも、椅子に腰掛けて、腕で頭を支えて、ウツラウツラとしていたのであった。
早朝であったか、まだ薄暗い、景色を見ながら、車窓を見ていると、美しい、夜明けの
海が見えてきたのであった。
水と、燃料の補給のため、停車したようであった。
停車した、振動で、向の椅子で、うつらうつらと、寝ていた小池君も、目がさめたようで、
「淵田さん、ここはどこですか。」と言うものだから、「広島県のおのみち言う、港街や。」
と、言うと、「そうですか、広島は遠いんやなーー。」と言うので、 「鉄道絵図では、あと、
ここから100キロぐらいや。」と、話しをしていると、「駅弁、駅弁、駅弁はいらんです
かいのーー。」と言う女の人の声が聞こえたのであった。
窓を、上にあげて、「おい、こっちや、ふたつくれへんか。」と声をかけると、「おはよう
ございます。 駅弁のほかに、瀬戸内の特産のミカン水いかがでしょうかのー。」と、駅弁
売りが、すすめるので、我々は、二人とも、駅弁と、ミカン水を買ったのであった。
ミカン水とは、現在のオレンジジュースのようなもので、生まれて初めて飲む、ミカン水を
口に運びながら、朝食の弁当を食べたのであった。
【次回に続く。】