第381回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第380話 八本松の駅での出来事。 2013年2月26日 火曜日の投稿です。
尾道駅を、我々を乗せた汽車は、出発し、客車の中で、小池君と、駅弁を食べて、朝食を取ったの
であった。
「なんか、銀米の上に、小さな小魚が、無数に載せてあって、上から、なにやら
かけてあるのであるが、なかなか、うまい、うまい。」と、私が言うと、
小池君が、「淵田さん、これは、イワシの稚魚ですね、瀬戸内の海鮮名物らし
いですわ。」と、言うので、 「 いろんな、うまいもんが、世の中、あるもんや。」
と、言うと、小池君が、ミカン水を飲みながら、「淵田さん、江田島の海軍兵
学校の周囲には、ネーブル畑が広がっているそうです。」と、言うので、
「ほうーー、ネーブルちゅーたら、なんかいの。」と聞くと、小池君が、「ミカンのおおきなのが、
ネープルと言うそうで、美味しいらしいです。」と言うので、私は、「そりゃー、楽しみやのー、
はよう、江田島に行ってみたいもんや。」と、話しをしていると、1時間程度であったか、
「はちほんまつ、 はちほんまつ。」 と、 駅の案内があったきり、1時間近く、鉄道がとまって、
動かなくなってしまったのであった。
「うーーん、広島まで、あと40キロくらいやが、水も、石炭も、積んだばかりなのに、なにを
しちょるんかいのーー。」と、私はイライラしてきたのであった。
駅員のおっさんに、「 おいさん、わしらーー、広島にはよー行かんといかんのですが、
ちっともうごかん、どうないなっとんですかーー。」と聞くと、「ここからは、峠越えで、
機関車一両では、八本松の峠を越えられないので、もう一両の機関車の到着を、
まっとるんじゃ。」と言うので、小池君と、「どないな、とうげなんやろ。」と、話していると
もう一両の蒸気機関車が、「シューー、シューーー。」と、音をたてて、線路に入ってきて、
機関車が、二両編成となり、八本松の駅を、出発したのであった。
一路、八本松の峠を越えて、我々を乗せた汽車は、広島の瀬の川駅に向かって、
走り出してのであった。
【次回に続く。】