第398回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第397話  整理整頓の事。      2013年3月24日 日曜日の投稿です。
 
 
  私は、同郷の奈良県出身の同い年の先輩生徒の安井保門3号生徒【のちの海軍艦政本部 大佐】
 
に、呼びだされて、海軍では、5分前には、必ず集合と言うことを、 年下の生徒の前で、厳しく注意されて、
 
「えらい、すんません。」と、ことわりを言っていたのであったが、後の土間から、三谷家の老婆の声で、
 
 
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   「 安井君、 淵田君は、朝の4時からおきてなーー、1度に、9人分の食事作るの、大変じゃーー
 
おもようたら、 みんな、ねようるうちから、1人だけ、頼みもせんのに、てごうしてくれて、
 
 ほんまに、たすかったわーー、さっきもねーー、茶碗や、お椀をかたづけてくりょーーたんよ。」
 
と、言ってくれたのであった。
 
 それを聞いた、安井生徒は、「 そうだったのでありますか。」と、急に、態度が変わり、「 全員、よく聞け、
 
海軍兵学校では、自分の事は、極力、自分で行うように、 特に、片付けは、先輩生徒、週番士官殿から、
 
厳しい指導がある。 特に、寝具などは、片付けが、厳しく指導される。」と、言うと、「淵田生徒は、
 
列に戻ってよし。」と言うと、整列している他の生徒の顔を、じろり、じろりと見て回り、まだ、眠そうな
 
顔をしていた水戸中学の井上武男生徒の顔を見て 「茨城県の井上武男 生徒、 一歩前へ。」 と、
 
大きな声で号令すると、 水戸中学の井上武男君が、一歩前に出たのであった。
 
 
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    【  当時の海軍兵学校の寝具の整頓状況、 毛布の折り目が少しでもずれていたら、
 
      寝具を放り投げられて、ぐじゃぐじゃにされて何回もやり直しさせられていた。
 
      生徒の間では、この事を江田島台風と呼んでいた。】
 
 
    安井保門3号生徒は、 「 貴様は、今朝、寝具を自分で片付けたのか。」 と、問うたのであった
 
のであるが、井上武男生徒は、 要領が悪いというか、正直な人間で、「 なんにもしてないっぺや。」
 
と、解答すると、 安井生徒は、大きな声で、「 いいか、全員、今から、寝具を5分以内にもう一度、整頓
 
し直せ、 始めーーーー。」 と、大きな声で号令をかけると、 朝、私と三谷の老婆がかたづけた、布団を、
 
もう一度、納戸から出し直して、寝具の整理整頓を行ったのであった。
 
 安井保門3号生徒は、怒鳴り声で、「 集合時間までに、時間が無いぞ、急げ、急げ。」と、声をかけて、
 
 作業中、 「  よいか、  自分の事は、自分で行う、 今から、徹底するように。」
 
と言って、我々は、大急ぎで、もう一度、寝具を三谷家の納戸から1度出して、又、しまい込んだので
 
あった。
 
 
 
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 その後、再度整列して、 全員で、三谷家の老婆に丁重に挨拶して、 小用の港近くの集合場所に
 
 目指して出発したのであったが、 寝具片付けに時間が取られたという理由で、「全員、駆け足。」
 
の安井保門3号生徒の大きな声の号令で、 走って、集合場所に急いだのであった。
 
  現在も、この海軍の教えの、 身の回りの整理整頓は、私たちの体に染みついていて、
 
 周囲の物は、用事が済んだら、直ぐに、トランクにしまい込んでしまうのであるが、大切な事で
 
当時は、面倒だと考えていたのであるが、ご指導いただいた先輩には、感謝している。
 
 
【次回に続く。】